複数の事業や製品、テーマを抱えていると、「どれを育て、どれを維持し、どれを見直すべきか」が見えにくくなることはないでしょうか。
全部が大事に見える一方で、実際には人材も予算も時間も限られています。だからこそ、全体を見渡しながら優先順位をつける考え方が必要になります。
そんなときに役立つのが、PPMです。
PPMは、Product Portfolio Management の略で、事業や製品、テーマの組み合わせ全体を見ながら、資源配分や優先順位を考えるためのフレームワークです。
BCGマトリクスとセットで語られることが多いですが、BCGマトリクスが「代表的な見方」だとすれば、PPMは「ポートフォリオ全体をどう考えるか」という上位の考え方に近いです。
そこでこの記事では、PPMの意味、使い方、具体例、注意点までを、初心者向けにやさしく整理して解説します。
この記事でわかること
- PPMとは何か
- PPMは何に使うのか
- PPMの基本的な考え方
- PPMの進め方
- PPMの具体例
- BCGマトリクスとの違い
最初から高度なポートフォリオ管理をする必要はありません。まずは「複数の事業やテーマをまとめて見て、配分を考える型だ」とわかれば十分です。
PPMとは?
PPMとは、Product Portfolio Management の略で、複数の事業や製品、テーマを全体として見ながら、どこに資源を配分するかを考えるための考え方です。
もっとやさしく言うと、PPMは
バラバラに見ていた事業や製品を、1枚の地図のように見て優先順位を考える型です。
会社の中には、伸びている事業、安定して利益を出している事業、将来性はあるがまだ弱い事業、見直しが必要な事業など、さまざまなテーマがあります。
それらを個別最適で判断していると、全体としての資源配分が歪みやすくなります。
PPMは、そうした全体最適の視点を持つためのフレームです。
PPMを一言でいうと
PPMを一言でいうと、複数テーマの優先順位と資源配分を考えるフレームワークです。
PPMは、1つの事業を深掘りするための型ではなく、全体を見ながら“どこに力を入れるか”を考えるための型です。
PPMは何に使うのか
PPMは、主に次のような場面で使います。
- 複数事業の優先順位を決めるとき
- 製品群やサービス群の整理
- 研究開発テーマ群の見直し
- 教育テーマや研修群の重点整理
- 投資配分の議論
- 撤退、維持、育成の判断
たとえば、複数の新規テーマを同時に進めていると、「どれも可能性がある」と感じてしまい、結果として全部が中途半端になることがあります。PPMを使うと、全体を並べて、育てるもの、守るもの、見極めるものを分けやすくなります。
どんな人に向いているか
PPMが向いているのは、次のような人です。
- 複数テーマの優先順位をつけたい人
- 資源配分の整理をしたい人
- 全体最適で判断したい人
- 経営企画や事業企画に関わる人
PPMの基本的な考え方
PPMには固定の1つの図だけがあるわけではありませんが、考え方の核は次の通りです。
- テーマを単独で見ない
- 複数のテーマを並べて見る
- 成長性と収益性、将来性と競争力などの軸で比較する
- 資源をどう配るかを考える
つまり、PPMは「このテーマは良いか悪いか」を決めるだけではありません。
全体の中で、このテーマはどんな役割を持つのかを見ることが大切です。
たとえば、今は利益が大きくなくても、将来の柱になるテーマなら育成対象になります。
逆に、利益は安定しているが成長余地が少ないテーマは、稼ぎ頭として維持する対象かもしれません。
PPMの使い方
ここからは、PPMの基本的な使い方を順番に見ていきます。
最初は難しく考えず、まずは比較したい対象を一覧化するところから始めれば大丈夫です。
手順1 比較対象を決める
まずは、何をポートフォリオとして見るのかを決めます。
事業群、製品群、研究テーマ群、教育テーマ群などが対象になります。
手順2 比較軸を決める
次に、何を基準に比較するかを決めます。
市場成長率、シェア、利益率、戦略的重要度、技術成熟度、将来性など、目的に合った軸を選びます。
手順3 それぞれを位置づける
対象ごとに、比較軸の中でどの位置にあるかを整理します。
ここで、テーマ同士の違いが見えやすくなります。
手順4 役割を考える
それぞれの対象が、育成すべきものか、維持すべきものか、見極めるべきものかを考えます。
手順5 資源配分を決める
最後に、どこへ人、時間、予算を寄せるのかを考えます。
- 比較対象を決める
- 比較軸を決める
- それぞれを位置づける
- 役割を考える
- 資源配分を決める
PPMは、分類することではなく、全体の中で配分を考えることが大切です。
PPMの具体例
ここでは、「社内教育テーマ群」を例に、考え方を簡単に見てみます。
例:社内教育テーマ群のPPM
前提として、企業内で次のような教育テーマを持っているとします。
- 新入社員向け基礎研修
- 研究者向け専門教育
- DXリスキリング講座
- 管理職向けマネジメント研修
- 低利用の旧講座群
これらを、たとえば
- 成長性
- 社内インパクト
- 現在の利用度
のような軸で見ていくと、
- 新入社員向け基礎研修は、安定運用の核
- DXリスキリング講座は、重点育成対象
- 研究者向け専門教育は、戦略的に重要な重点テーマ
- 旧講座群は、整理や統合の候補
といった見方ができます。
このように整理すると、「全部大事」ではなく、全体の中での役割の違いが見やすくなります。
具体例でわかるポイント
- 複数テーマを並べて比較できる
- 役割の違いを整理しやすい
- 投資、維持、整理の議論をしやすい
PPMを使うメリット
PPMを使うメリットは、主に次の通りです。
- 全体最適で見やすい
- 資源配分を考えやすい
- 優先順位をつけやすい
- 感覚ではなく比較で議論しやすい
たとえば、個別テーマごとに見ていると、担当者の熱意や直近の事情に引っ張られやすくなります。ですが、PPMを使うと、全体の中での位置づけを見ながら判断しやすくなります。
PPMを使うときの注意点
注意
PPMは便利ですが、比較軸の置き方を間違えると、意味の薄い整理になりやすいです。
よくある失敗は、次のようなものです。
- 軸が曖昧すぎる
- 位置づけに客観性がない
- 今だけを見て将来性を見ない
- 配分の議論につながらない
特に初心者は、「並べてみた」だけで満足しがちですが、そうではありません。大切なのは、並べた結果を、何を育て、何を守り、何を見直すかに結びつけることです。
BCGマトリクスとの違い
PPMとよく比較されるのが、BCGマトリクスです。
- PPM → ポートフォリオ全体を見て資源配分を考える考え方
- BCGマトリクス → 市場成長率とシェアで整理する代表的な型
つまり、PPMは上位の考え方であり、BCGマトリクスはその具体的な見方の1つです。
どう使い分ければよいか
まずPPMという考え方で「全体を見て配分する」と理解し、その具体的な道具としてBCGマトリクスを使う流れが自然です。
PPMが目的、BCGマトリクスが代表的な手段、と考えるとわかりやすいです。
アンゾフの成長マトリクスとの違い
PPMは、アンゾフの成長マトリクスとも役割が異なります。
- PPM → 複数テーマの優先順位と配分を考える型
- アンゾフの成長マトリクス → 個別事業の成長方向を考える型
この違いを理解しておくと、実務で迷いにくくなります。
PPMは、全体をどう配るかに向いています。
一方、アンゾフの成長マトリクスは、各事業をどう伸ばすかに向いています。
PPMはどんな場面で使うと効果的か
特にPPMが効果を発揮しやすいのは、次のような場面です。
- 複数の事業やテーマを比較したいとき
- 重点テーマを決めたいとき
- 育成と維持と整理を分けたいとき
- 経営資源の配分を考えたいとき
逆に、単一テーマを深掘りしたいときや、顧客理解を深めたいときには、3C分析やSTP分析など別のフレームワークのほうが合います。
そのため、PPMは万能ではなく、複数テーマを並べて全体最適を考えたい場面で使うのが最も効果的です。
まとめ
PPMとは、複数の事業や製品、テーマを全体として見ながら、優先順位と資源配分を考えるためのフレームワークです。
経営企画、事業企画、研究開発テーマ整理、教育テーマ整理など幅広い場面で使いやすく、特に「全部大事に見えて絞れない」ときの入口として役立ちます。
最初は難しく見えるかもしれませんが、まずは
- 比較対象を決める
- 比較軸を決める
- 位置づける
- 配分を考える
の4つを意識するだけでも十分です。
大切なのは、分類することではなく、全体の中でどこへ力を入れるかを決めることです。
まずは身近なテーマで1回試してみてください。複数事業、講座群、研究テーマ群、製品群など、小さな比較対象でも十分です。
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PPMだけでなく、その前後で使う型も一緒に知っておくと、実務でさらに使いやすくなります。
