品質管理や業務改善に取り組むとき、「問題の原因がどこにあるのかわからない」「原因らしきものが多すぎて整理できない」「会議で意見がバラバラになる」と感じることはないでしょうか。
問題が起きたとき、すぐに対策を考えたくなります。
しかし、原因を十分に整理しないまま対策を打つと、表面的な対応で終わってしまうことがあります。
そんなときに役立つのが、特性要因図です。
特性要因図は、問題の結果に対して、考えられる原因を魚の骨のような形で整理するフレームワークです。
見た目が魚の骨に似ているため、フィッシュボーン図とも呼ばれます。
品質管理のQC7つ道具の1つとしても知られており、原因分析やなぜなぜ分析の補助にも使いやすい方法です。
この記事では、特性要因図の意味、使い方、具体例、注意点までを、初心者向けにやさしく整理して解説します。
この記事でわかること
- 特性要因図とは何か
- 特性要因図は何に使うのか
- 特性要因図の基本的な考え方
- 特性要因図の使い方
- 特性要因図の具体例
- 関連フレームワークとの違い
最初からきれいな図を作る必要はありません。まずは「特性要因図は、問題の原因を魚の骨のように整理するための型だ」とつかめれば十分です。
特性要因図とは?
特性要因図とは、ある問題や結果に対して、考えられる原因を体系的に整理するための図です。
「特性」とは、問題として現れている結果のことです。
たとえば、「不良品が多い」「納期遅れが多い」「問い合わせミスが多い」「研修参加者が少ない」といったものです。
「要因」とは、その特性を引き起こしている可能性がある原因のことです。
特性要因図では、右側に問題となる特性を書き、その左側に大きな原因分類と細かな原因を枝分かれさせて整理します。
見た目が魚の骨のようになるため、フィッシュボーン図とも呼ばれます。
やさしく言うと、特性要因図は「問題の原因候補を、見える形で整理するための図」です。
一言でいうと、特性要因図は、原因を漏れなく広く考えるための型です。
特性要因図は何に使うのか
特性要因図は、問題の原因を整理したいときに使います。
特に、原因が複数ありそうな問題や、関係者の意見がバラバラになりやすい問題に向いています。
特性要因図は、次のような場面で活用できます。
- 不良やミスの原因を整理したいとき
- 問題の原因候補を広く洗い出したいとき
- 会議で出た意見を整理したいとき
- なぜなぜ分析の前に原因を俯瞰したいとき
- QC活動や品質改善を進めたいとき
- 業務改善の原因分析をしたいとき
- チームで共通認識を持ちたいとき
たとえば、製造工程で不良品が増えている場合、原因は作業者のミスだけとは限りません。
設備の状態、材料のばらつき、作業方法、測定方法、作業環境など、さまざまな要因が関係している可能性があります。
特性要因図を使うと、そうした原因候補を整理しやすくなります。
どんな人に向いているか
特性要因図が向いているのは、次のような人です。
- 品質管理に関わる人
- 業務改善を担当している人
- 製造現場で改善活動を行う人
- ミスや不具合の原因を整理したい人
- なぜなぜ分析を行う人
- チームで問題解決を進めたい人
- 会議で原因分析を整理したい人
特性要因図は、製造業だけでなく、事務、営業、カスタマーサポート、教育、医療、サービス業などでも使えます。
特性要因図の基本的な考え方
特性要因図の基本的な考え方は、問題の原因を大きな分類に分けて整理することです。
問題が起きたとき、人は目につきやすい原因だけに注目しがちです。
たとえば、不良品が出たときに「作業者の注意不足だ」と考えてしまうことがあります。
しかし、実際には作業手順がわかりにくい、設備が古い、材料にばらつきがある、検査基準があいまい、作業環境が悪いなど、他の原因が関係しているかもしれません。
特性要因図では、原因を大きな分類に分けて考えます。
製造現場では、よく次のような分類が使われます。
- 人
- 設備
- 方法
- 材料
- 測定
- 環境
これは、4Mや5M、6Mと呼ばれる考え方に近い分類です。
ただし、必ずこの分類を使わなければならないわけではありません。
事務業務であれば、人、手順、システム、情報、環境、ルールなどに分けてもよいです。
マーケティングや研修であれば、ターゲット、内容、導線、タイミング、告知方法、運営体制などに分けることもできます。
大切なのは、原因を一方向から決めつけず、複数の視点から広く考えることです。
特性要因図の使い方
特性要因図は、次の流れで使います。
手順1 問題となる特性を決める
最初に、整理したい問題を決めます。
この問題が、特性要因図の「特性」にあたります。
たとえば、次のようなものです。
- 不良品が多い
- 納期遅れが多い
- 問い合わせ対応ミスが多い
- 研修参加者が少ない
- 作業時間が長い
- 顧客満足度が低い
ここで大切なのは、問題をできるだけ具体的にすることです。
「品質が悪い」だけでは広すぎます。
「A工程で発生する寸法不良が多い」「問い合わせメールの返信漏れが多い」のように、対象を絞ると原因を考えやすくなります。
手順2 大きな原因分類を決める
次に、大きな原因分類を決めます。
製造現場であれば、人、設備、方法、材料、測定、環境などが使いやすいです。
事務業務であれば、人、手順、システム、情報、ルール、環境などが使いやすいでしょう。
たとえば、問い合わせ対応ミスをテーマにするなら、次のような分類が考えられます。
- 人
- 手順
- システム
- 情報
- 教育
- 環境
分類は、問題の内容に合わせて変えて構いません。
大切なのは、原因を広く考えられる分類にすることです。
手順3 原因候補を書き出す
大きな分類を決めたら、それぞれの分類ごとに原因候補を書き出します。
たとえば、「人」の分類では、経験不足、確認不足、思い込み、忙しさ、教育不足などが考えられます。
「手順」の分類では、手順書がない、手順が古い、確認項目が多い、例外対応が不明確などが考えられます。
この段階では、原因を決めつける必要はありません。
まずは、考えられる原因候補を広く出すことが大切です。
手順4 原因を深掘りする
原因候補が出てきたら、さらに深掘りします。
たとえば、「確認不足」という原因が出た場合、さらに次のように考えます。
- なぜ確認不足が起きるのか
- 確認項目が多すぎるのか
- チェックリストがないのか
- 時間が足りないのか
- 判断基準があいまいなのか
このように、原因をさらに細かく分解していきます。
ここで、なぜなぜ分析を組み合わせると効果的です。
特性要因図で原因候補を広く整理し、その後になぜなぜ分析で深掘りすると、根本原因に近づきやすくなります。
手順5 重要な原因を絞り込む
最後に、出てきた原因候補の中から重要なものを絞り込みます。
特性要因図に書いた原因は、あくまで候補です。
すべてが本当の原因とは限りません。
そのため、現場確認やデータ確認を行いながら、重要な原因を見極めます。
たとえば、不良の発生データ、作業記録、チェックシート、ヒアリング結果などを確認します。
重要な原因が見えてきたら、改善策を考えます。
特性要因図は、原因候補を出すための道具であり、最終的な結論を出すには事実確認が必要です。
特性要因図の具体例
ここでは、「問い合わせ対応ミスが多い」というテーマで、特性要因図の考え方を見てみます。
例 問い合わせ対応ミスが多い場合
前提として、カスタマーサポート部門で問い合わせ対応ミスが増えているとします。
具体的には、回答漏れ、入力ミス、確認不足、担当者間の引き継ぎ漏れが起きています。
まず、特性として「問い合わせ対応ミスが多い」と設定します。
次に、大きな原因分類を決めます。
ここでは、次のように分けます。
- 人
- 手順
- システム
- 情報
- 教育
- 環境
「人」の要因としては、経験不足、確認不足、思い込み、忙しさ、集中力低下などが考えられます。
「手順」の要因としては、対応手順が古い、例外対応が不明確、チェックリストがない、確認ルールが曖昧などが考えられます。
「システム」の要因としては、入力画面が複雑、必須項目がわかりにくい、過去履歴を探しにくい、通知機能が弱いなどが考えられます。
「情報」の要因としては、FAQが古い、商品情報が分散している、変更情報が共有されていないなどが考えられます。
「教育」の要因としては、新人研修が不足している、OJT任せになっている、判断基準が共有されていないなどが考えられます。
「環境」の要因としては、問い合わせ件数が多い、割り込みが多い、集中しにくい、繁忙期に人員が足りないなどが考えられます。
このように整理すると、「担当者が注意すればよい」という単純な話ではなく、手順、システム、情報共有、教育、環境など、さまざまな要因が関係していることが見えてきます。
別の例 社内研修の参加者が少ない場合
特性要因図は、品質管理だけでなく、社内研修やマーケティング施策にも使えます。
たとえば、「社内研修の参加者が少ない」という問題を考えます。
この場合、大きな原因分類として、次のようなものが考えられます。
- 対象者
- 内容
- 告知
- タイミング
- 上司の関与
- 参加しやすさ
「対象者」の要因としては、誰向けの研修かわかりにくい、対象者の課題と合っていない、初心者向けなのか実務者向けなのか不明確、などが考えられます。
「内容」の要因としては、テーマが難しそう、業務にどう役立つかわかりにくい、事例が少ない、演習がない、などが考えられます。
「告知」の要因としては、メールタイトルが弱い、告知回数が少ない、参加メリットが伝わっていない、申込方法がわかりにくい、などが考えられます。
「タイミング」の要因としては、繁忙期と重なっている、開催時間が参加しにくい、案内が直前すぎる、などが考えられます。
「上司の関与」の要因としては、上司が参加を促していない、業務時間として認められていない、部署内で優先度が低い、などが考えられます。
「参加しやすさ」の要因としては、会場が遠い、オンライン参加がない、時間が長い、資料が事前に見られない、などが考えられます。
このように特性要因図を使うと、参加者が少ない理由を広く整理できます。
具体例でわかるポイント
特性要因図の具体例からわかるポイントは、問題を一つの原因に決めつけないことです。
- 原因候補を広く出せる
- 大きな分類で整理できる
- チームで原因を共有しやすい
- なぜなぜ分析の前段階として使える
- 改善策を考える前に原因の全体像を見られる
特性要因図は、原因分析の入口として使いやすいフレームワークです。
特性要因図を使うメリット
特性要因図を使うメリットは、原因を整理しやすくなることです。
問題が起きたとき、原因を頭の中だけで考えると、どうしても偏りが出やすくなります。
特性要因図を使うと、原因を大きな分類に分けて整理できるため、抜け漏れに気づきやすくなります。
主なメリットは、次の通りです。
- 原因候補を広く洗い出せる
- 問題の全体像を見える化できる
- チームで意見を出しやすい
- 原因を一つに決めつけにくくなる
- なぜなぜ分析と組み合わせやすい
- 改善策を考える前の整理に使いやすい
特に、会議やワークショップで原因分析を行うときに便利です。
参加者の意見を図に整理することで、問題の見方をそろえやすくなります。
特性要因図を使うときの注意点
特性要因図を使うときに注意したいのは、図に書いた原因をそのまま本当の原因だと思い込まないことです。
よくある失敗は、次のようなものです。
- 原因候補を書き出しただけで満足してしまう
- 事実確認をせずに原因を決めつける
- 分類が合っておらず考えにくい
- 原因が表面的なままで深掘りされていない
- 改善策につながっていない
- 図が複雑になりすぎて使いにくい
特性要因図は、原因候補を整理するための道具です。
最終的に本当の原因を特定するには、現場確認やデータ確認が必要です。
たとえば、「教育不足」と書いたとしても、本当に教育が原因なのか、手順書がわかりにくいのか、システムが使いにくいのかを確認する必要があります。
また、原因を深掘りせずに終わると、対策も表面的になります。
「確認不足」という原因に対して「確認を徹底する」という対策だけでは、再発防止として弱い場合があります。
なぜ確認不足が起きるのかまで考えることが大切です。
関連フレームワークとの違い
特性要因図と関連するフレームワークには、QC7つ道具、なぜなぜ分析、ロジックツリー、FTAなどがあります。
それぞれの違いを簡単に整理します。
- 特性要因図
問題に対する原因候補を広く洗い出し、分類して整理する図です。原因分析の入口に向いています。 - QC7つ道具
品質管理で使う7つの基本ツールです。特性要因図は、QC7つ道具の1つです。 - なぜなぜ分析
「なぜ?」を繰り返して原因を深掘りする方法です。特性要因図で広く原因を出した後、重要な原因を深掘りするときに使いやすいです。 - ロジックツリー
問題や要素を論理的に分解するフレームワークです。原因分析だけでなく、施策分解や論点整理にも使えます。 - FTA
Fault Tree Analysisの略で、故障や事故の原因を論理的に分析する手法です。特性要因図よりも論理構造や発生条件を厳密に扱う場合に使われます。
特性要因図は、原因候補を広く出すのに向いています。
一方で、根本原因を深掘りするならなぜなぜ分析、論理構造を厳密に見るならFTA、幅広い問題分解にはロジックツリーが使いやすい場合があります。
特性要因図はどんな場面で使うと効果的か
特性要因図は、特に次のような場面で効果的です。
- 不良やミスの原因を整理したいとき
- 問題の原因候補を広く洗い出したいとき
- チームで原因分析を行いたいとき
- なぜなぜ分析の前に全体像を見たいとき
- 品質管理やQC活動を進めたいとき
- 業務改善の原因分析をしたいとき
- 改善策を考える前に原因を整理したいとき
特性要因図は、問題の原因が複数ありそうな場面に向いています。
一方で、原因がすでに明確な場合や、発生条件を厳密に分析したい場合には、なぜなぜ分析やFTAと組み合わせるとよいでしょう。
まとめ
特性要因図とは、問題の結果に対して、考えられる原因を魚の骨のような形で整理するフレームワークです。
フィッシュボーン図とも呼ばれ、QC7つ道具の1つとして品質管理や業務改善で広く使われます。
特性要因図を使うと、原因を一つに決めつけず、人、設備、方法、材料、測定、環境などの視点から広く整理できます。
また、なぜなぜ分析の補助として使うことで、原因候補を広く出したうえで重要な原因を深掘りできます。
大切なのは、図を作って終わりにしないことです。
特性要因図に書いた原因は、あくまで候補です。
現場の事実やデータを確認しながら、本当に重要な原因を見極め、改善策につなげることが必要です。
まずは、身近な問題を1つ選び、原因を大きな分類に分けて書き出してみましょう。
問題の全体像が見えやすくなり、改善の第一歩を踏み出しやすくなります。