どこから始まり、何を受け取り、どのように処理し、何を出し、誰に届けているのかを明確にしなければ、改善の方向性がぶれてしまいます。
そんなときに役立つのが、SIPOCです。
SIPOCは、Supplier、Input、Process、Output、Customerの5つで業務プロセスを整理するフレームワークです。
製造業や品質管理、シックスシグマ、業務改善などでよく使われますが、事務、営業、カスタマーサポート、教育、研究開発、マーケティングなどにも応用できます。
この記事では、SIPOCの意味、使い方、具体例、注意点までを、初心者向けにやさしく整理して解説します。
この記事でわかること
- SIPOCとは何か
- SIPOCは何に使うのか
- Supplier、Input、Process、Output、Customerの意味
- SIPOCの使い方
- SIPOCの具体例
- 関連フレームワークとの違い
最初から細かい業務フローを書く必要はありません。まずは「SIPOCは、業務の入口から出口までを大きく整理するための型だ」とつかめれば十分です。
SIPOCとは?
SIPOCとは、業務プロセスの全体像を整理するためのフレームワークです。
SIPOCは、次の5つの言葉の頭文字を取ったものです。
- Supplier:供給者
- Input:入力
- Process:プロセス
- Output:出力
- Customer:顧客
やさしく言うと、SIPOCは「誰から何を受け取り、どのように処理し、何を誰に渡すのか」を整理する方法です。
たとえば、問い合わせ対応業務で考えると、Supplierは問い合わせを送る顧客、Inputは問い合わせ内容、Processは受付から回答までの流れ、Outputは回答内容、Customerは回答を受け取る顧客になります。
業務改善では、細かい作業に目が行きすぎると、全体の流れを見失うことがあります。
SIPOCを使うと、業務の入口、処理、出口、関係者を大きく整理できます。
一言でいうと、SIPOCは、業務プロセスの全体像を見える化するためのフレームワークです。
SIPOCは何に使うのか
SIPOCは、業務プロセスを整理したいときに使います。
特に、改善対象の範囲を決めたいときや、関係者間で業務の全体像を共有したいときに役立ちます。
SIPOCは、次のような場面で活用できます。
- 業務プロセスの全体像を整理したいとき
- 改善対象の範囲を明確にしたいとき
- 誰から何を受け取っているか確認したいとき
- 誰に何を提供しているか確認したいとき
- 業務フローを作る前に大枠を整理したいとき
- シックスシグマやDMAICのDefineで使いたいとき
- 部門間の認識をそろえたいとき
たとえば、受注処理を改善したい場合、いきなり入力画面や承認フローだけを見るのではなく、まず受注処理全体を整理します。
顧客や営業から何を受け取り、どの部署が処理し、どの情報を出力し、誰がそれを使うのかを確認します。
SIPOCを使うと、改善対象の境界が明確になり、関係者同士で認識を合わせやすくなります。
どんな人に向いているか
SIPOCが向いているのは、次のような人です。
- 業務改善を担当している人
- 品質管理に関わる人
- シックスシグマやDMAICを学びたい人
- 業務フローを整理したい人
- 部門間の業務連携を改善したい人
- プロセス改善を進めたい人
- 改善対象の範囲を明確にしたい人
SIPOCは、業務の細部に入る前に、全体像を確認するための入口として使いやすいフレームワークです。
SIPOCの基本的な考え方
SIPOCの基本的な考え方は、業務を5つの要素で整理することです。
業務は、単独で存在しているわけではありません。
多くの場合、誰かから情報や材料を受け取り、それを処理し、何らかの成果物として誰かに渡しています。
SIPOCでは、この流れを次の5つで整理します。
- Supplier:誰が提供するのか
- Input:何を受け取るのか
- Process:どのように処理するのか
- Output:何を出すのか
- Customer:誰が受け取るのか
ここでいうCustomerは、外部顧客だけとは限りません。
社内の次工程、上司、別部署、利用者、後続業務の担当者などもCustomerになります。
たとえば、社内報告書の作成業務であれば、Supplierは各部署、Inputは実績データ、Processは集計と資料作成、Outputは報告書、Customerは経営層や部門長になります。
SIPOCを使うと、自分たちの業務が前後の工程とどうつながっているかが見えやすくなります。
これにより、「自分たちの作業だけを改善する」のではなく、「全体の流れの中で何を改善すべきか」を考えやすくなります。
SIPOCの使い方
SIPOCは、次の流れで使うとわかりやすいです。
手順1 対象プロセスを決める
まず、整理したい業務プロセスを決めます。
対象は、受注処理、問い合わせ対応、月次報告書作成、研修運営、製造工程、検査工程、契約書確認など、さまざまです。
最初は、対象を広げすぎないことが大切です。
たとえば、「営業業務全体」では広すぎます。
「見積作成プロセス」「新規問い合わせ対応プロセス」「受注登録プロセス」のように、具体的な範囲に絞ると整理しやすくなります。
対象プロセスを決めるときには、どこから始まり、どこで終わるのかも明確にします。
手順2 Processを整理する
SIPOCでは、最初にProcessを整理すると進めやすいです。
Processとは、業務の主要な流れです。
細かく書きすぎる必要はありません。
5段階から7段階程度の大きな流れで整理すると、全体像が見えやすくなります。
たとえば、問い合わせ対応なら、次のような流れになります。
- 問い合わせを受け付ける
- 内容を確認する
- 必要情報を調べる
- 回答案を作成する
- 顧客へ回答する
- 対応履歴を記録する
この段階では、詳細な業務フローではなく、大きなプロセスとして整理するのがポイントです。
手順3 Outputを整理する
次に、Processから生まれるOutputを整理します。
Outputとは、業務の結果として出てくるものです。
たとえば、問い合わせ対応なら、顧客への回答、対応記録、エスカレーション依頼などがOutputになります。
月次報告書作成なら、報告書、集計データ、会議用資料などがOutputになります。
Outputを整理するときは、「このプロセスは最終的に何を生み出しているのか」を考えます。
成果物があいまいだと、業務の目的もあいまいになります。
手順4 Customerを整理する
次に、Outputを受け取るCustomerを整理します。
Customerは、外部顧客だけではありません。
社内の利用者、次工程の担当者、上司、関係部署、経営層などもCustomerになります。
たとえば、月次報告書のCustomerは、部門長や経営層かもしれません。
問い合わせ対応のCustomerは、問い合わせをした顧客です。
検査工程のCustomerは、次工程や出荷部門かもしれません。
Customerを整理することで、「誰のための業務なのか」が明確になります。
手順5 InputとSupplierを整理する
最後に、InputとSupplierを整理します。
Inputとは、プロセスに入ってくる情報、材料、依頼、データなどです。
Supplierとは、そのInputを提供する人や部門です。
たとえば、問い合わせ対応なら、Inputは問い合わせ内容、顧客情報、商品情報、過去の対応履歴などです。
Supplierは、顧客、営業部門、商品部門、システムなどになります。
月次報告書作成なら、Inputは各部署の実績データ、売上データ、費用データなどです。
Supplierは、各部署、経理部門、営業部門、システムなどになります。
InputとSupplierを整理すると、業務の入口で何が必要かが見えやすくなります。
Inputの品質が悪いと、ProcessやOutputにも影響します。
SIPOCの具体例
ここでは、「問い合わせ対応業務」を例に、SIPOCの使い方を見てみます。
例 問い合わせ対応業務を整理する場合
前提として、カスタマーサポート部門の問い合わせ対応を改善したいとします。
まず、対象プロセスを「問い合わせ受付から回答完了まで」と設定します。
SIPOCで整理すると、次のようになります。
Supplierは、顧客、営業部門、商品部門、過去対応データベースなどです。
Inputは、問い合わせ内容、顧客情報、商品情報、過去の対応履歴、FAQなどです。
Processは、問い合わせ受付、内容確認、情報確認、回答作成、回答送信、履歴記録です。
Outputは、顧客への回答、対応履歴、必要に応じたエスカレーション情報です。
Customerは、問い合わせをした顧客、営業担当、次に対応するサポート担当者などです。
このように整理すると、問い合わせ対応の全体像が見えます。
もし回答ミスが多い場合、Processだけでなく、Inputである商品情報やFAQが古いことが原因かもしれません。
もし対応が遅い場合、Supplierから必要な情報が届くのが遅いのかもしれません。
SIPOCを使うと、問題がどこにあるのかを広く考えやすくなります。
別の例 月次報告書作成を整理する場合
月次報告書作成でも、SIPOCは使えます。
対象プロセスを「各部署の実績データを集めて月次報告書を作成する業務」とします。
Supplierは、営業部門、経理部門、各事業部、システムです。
Inputは、売上データ、費用データ、進捗情報、コメント、前月資料です。
Processは、データ収集、内容確認、集計、分析、資料作成、レビュー、提出です。
Outputは、月次報告書、会議資料、改善課題リストです。
Customerは、経営層、部門長、会議参加者です。
このように整理すると、月次報告書作成のどこに問題があるかを考えやすくなります。
たとえば、データ提出が遅いならSupplierやInputの問題です。
集計に時間がかかるならProcessの問題です。
報告書が使われていないならOutputやCustomerのニーズに問題があるかもしれません。
具体例でわかるポイント
SIPOCの具体例からわかるポイントは、業務を入口から出口まで大きく見ることです。
- 誰が情報や材料を提供しているか
- 何を受け取っているか
- どのように処理しているか
- 何を成果物として出しているか
- 誰がそれを受け取っているか
この5つを整理することで、業務の全体像が見えやすくなります。
SIPOCを使うメリット
SIPOCを使うメリットは、業務プロセスの全体像を短時間で整理できることです。
細かい業務フローを作る前に、SIPOCで大枠を整理すると、関係者同士の認識を合わせやすくなります。
主なメリットは、次の通りです。
- 業務の全体像を把握しやすい
- 改善対象の範囲を明確にできる
- 前工程と後工程の関係を整理できる
- 入力と出力の品質を確認しやすい
- 顧客や利用者を意識しやすくなる
- 関係者間の認識をそろえやすい
- DMAICや業務改善の入口として使いやすい
SIPOCは、細かい分析に入る前の整理に向いています。
業務改善プロジェクトの最初に使うことで、「何を改善するのか」「どこまでを対象にするのか」を共有しやすくなります。
SIPOCを使うときの注意点
SIPOCを使うときに注意したいのは、細かく書きすぎないことです。
よくある失敗は、次のようなものです。
- Processを細かく書きすぎる
- SupplierやCustomerを狭く考えすぎる
- Outputがあいまいなままになる
- 実際の業務ではなく理想の流れを書いてしまう
- 作って終わりになり改善につながらない
- 関係者と確認せずに一人で作ってしまう
SIPOCは、詳細な業務手順書ではありません。
あくまで、業務の全体像を大きく整理するためのフレームワークです。
細かい手順を確認したい場合は、SIPOCの後に業務フロー図やバリューストリームマップを作るとよいでしょう。
また、SIPOCは関係者と一緒に作ると効果的です。
自分では見えていなかったSupplierやCustomer、Input、Outputに気づくことがあります。
関連フレームワークとの違い
SIPOCと関連するフレームワークには、業務フロー図、バリューストリームマップ、DMAIC、VOCなどがあります。
それぞれの違いを簡単に整理します。
- SIPOC
Supplier、Input、Process、Output、Customerで業務の全体像を整理するフレームワークです。改善対象の大枠をつかむのに向いています。 - 業務フロー図
作業の流れや分岐、担当者を詳しく整理する図です。SIPOCよりも詳細な業務手順の把握に向いています。 - バリューストリームマップ
工程全体の流れ、待ち時間、情報の流れ、価値を生む作業とムダを見える化する方法です。製造や業務プロセス改善に向いています。 - DMAIC
Define、Measure、Analyze、Improve、Controlの流れで問題解決を進める方法です。SIPOCはDefineの段階で使いやすいです。 - VOC
Voice of Customerの略で、顧客の声を整理する考え方です。SIPOCのCustomerやOutputを考えるときに役立ちます。
SIPOCは、業務プロセスの大枠を整理するためのフレームワークです。
詳細な手順を分析するなら業務フロー図、ムダや待ち時間を見たいならバリューストリームマップ、改善プロジェクト全体を進めるならDMAICと組み合わせると効果的です。
SIPOCはどんな場面で使うと効果的か
SIPOCは、特に次のような場面で効果的です。
- 業務改善プロジェクトを始めるとき
- 改善対象の範囲を決めたいとき
- 業務の全体像を関係者で共有したいとき
- 前工程と後工程の関係を整理したいとき
- 入力や出力の品質を確認したいとき
- 業務フロー図を作る前に大枠を整理したいとき
- DMAICのDefine段階でプロセスを確認したいとき
SIPOCは、細かい改善策を考える前に使うと効果的です。
一方で、具体的な作業時間、待ち時間、ムダ、滞留を詳しく分析したい場合には、バリューストリームマップや業務フロー図を使うとよいでしょう。
また、原因分析には特性要因図やなぜなぜ分析を組み合わせると効果的です。
まとめ
SIPOCとは、Supplier、Input、Process、Output、Customerの5つで業務プロセスを整理するフレームワークです。
誰から何を受け取り、どのように処理し、何を出し、誰に届けるのかを見える化できます。
SIPOCを使うと、業務の全体像を把握しやすくなり、改善対象の範囲も明確になります。
また、前工程と後工程、入力と出力、顧客や利用者を意識しながら業務を見直せます。
大切なのは、細かく書きすぎないことです。
SIPOCは詳細な手順書ではなく、業務の大枠を整理するためのものです。
まずは、身近な業務を1つ選び、「誰から何を受け取り、何をして、何を誰に渡しているのか」を書き出してみましょう。
それが、業務改善の全体像をつかむ第一歩になります。
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