事業戦略を考えるときに、「自社は何の会社なのか」「どの領域を自分たちの勝負どころとするのか」が曖昧なまま議論が進んでしまうことはないでしょうか。
商品や技術の話はできても、そもそもどこを事業領域として定めるのかが曖昧だと、戦略もぶれやすくなります。
そんなときに役立つのが、ドメイン分析です。
ドメイン分析は、誰に、何を、どうやって提供するのかという観点から、事業の定義や戦う領域を整理するフレームワークです。共有いただいた一覧でも、ドメイン分析は「誰に、何を、どうやって提供するか」と整理されています。
そこでこの記事では、ドメイン分析の意味、使い方、具体例、注意点までを、初心者向けにやさしく整理して解説します。
この記事でわかること
- ドメイン分析とは何か
- ドメイン分析は何に使うのか
- ドメイン分析の基本構成
- ドメイン分析の進め方
- ドメイン分析の具体例
- STP分析との違い
最初から完璧に事業定義を作る必要はありません。まずは「誰に、何を、どうやっての3つで事業領域を整理する型だ」とわかれば十分です。
ドメイン分析とは?
ドメイン分析とは、事業や組織の活動領域を、誰に、何を、どうやって提供するのかという観点で整理するフレームワークです。
もっとやさしく言うと、ドメイン分析は
自社はどこで勝負するのかを、顧客・価値・手段の3つで定義する型です。
事業の方向性を考えるとき、「うちはこの製品を作っている会社です」と製品中心で定義してしまうことがあります。
しかし、それだけでは市場変化に弱くなりやすいです。
たとえば、技術や製品ではなく、「誰のどんな課題を、どんな手段で解くのか」で定義したほうが、事業の見通しがよくなることがあります。
ドメイン分析は、その“事業の定義の仕方”を整理するための型です。
ドメイン分析を一言でいうと
ドメイン分析を一言でいうと、事業領域を定義するフレームワークです。
ドメイン分析は、単に売っているものを並べるのではなく、「自社はどこで価値を出すのか」を明確にするための型です。
ドメイン分析は何に使うのか
ドメイン分析は、主に次のような場面で使います。
- 事業の方向性を整理したいとき
- 新規事業の領域設定を考えるとき
- 既存事業の再定義をしたいとき
- 自社の戦う範囲を明確にしたいとき
- 経営理念や戦略を具体化したいとき
- 商品中心から顧客価値中心へ見直したいとき
たとえば、「うちは研修会社です」と定義するのと、「働く人の学びと行動変容を支援する会社です」と定義するのとでは、見える戦略の幅が変わります。
前者は商品に縛られやすく、後者は価値起点で広がりやすくなります。
ドメイン分析は、そうした事業の枠の引き方を考えるのに役立ちます。
どんな人に向いているか
ドメイン分析が向いているのは、次のような人です。
- 事業の軸を整理したい人
- 新規事業の領域を考えたい人
- 自社の定義を見直したい人
- 戦略の前提を言葉にしたい人
ドメイン分析の基本構成
ドメイン分析は、基本的に次の3つの要素で成り立っています。
- 誰に
- 何を
- どうやって
それぞれの意味を簡単に見ていきます。
誰に
「誰に」は、価値を届ける対象です。
顧客、利用者、受益者、対象部門など、誰を相手にするのかを整理します。
ここが広すぎると事業はぼやけやすく、狭すぎると成長余地が小さくなることがあります。
何を
「何を」は、提供する価値です。
商品そのものではなく、課題解決や便益、得られる成果として整理すると、戦略が広がりやすくなります。
どうやって
「どうやって」は、その価値を届ける手段です。
技術、製品、サービス、チャネル、仕組み、運営方法などがここに入ります。
ドメイン分析の使い方
ここからは、ドメイン分析の基本的な使い方を順番に見ていきます。
最初は難しく考えず、今の事業を「誰に、何を、どうやって」で言い直すところから始めれば大丈夫です。
手順1 今の事業を言語化する
まずは、今の事業を「誰に、何を、どうやって」で表現してみます。
現状の定義が曖昧だと、見直しも難しくなります。
手順2 顧客を見直す
次に、誰を相手にしているのか、誰を相手にすべきなのかを整理します。
顧客の定義が戦略の幅を大きく左右します。
手順3 価値を見直す
商品や機能ではなく、顧客にとっての価値で言い換えられないかを考えます。
手順4 手段を見直す
今のやり方だけに縛られず、別の届け方や実現方法がないかも考えます。
手順5 事業領域を定義し直す
最後に、「自社はどこで勝負するのか」を一文で整理します。
- 今の事業を言語化する
- 顧客を見直す
- 価値を見直す
- 手段を見直す
- 事業領域を定義し直す
ドメイン分析は、表面的な言い換えではなく、事業の見方そのものを見直すことが大切です。
ドメイン分析の具体例
ここでは、「社内教育サービス」を例に、考え方を簡単に見てみます。
例:社内教育サービスのドメイン分析
前提として、企業内の教育活動をどう定義するかを考えるとします。
ある見方では、
- 誰に
社員に - 何を
研修を - どうやって
集合研修やeラーニングで提供する
となります。
しかし、価値起点で考え直すと、
- 誰に
業務で成長を求められる社員や管理職に - 何を
実務で成果を出すための学びと行動変容を - どうやって
研修、動画、演習、上司対話、実務連動の仕組みで提供する
と整理できます。
このように見直すと、「講座を作ること」が目的ではなく、仕事で成果を出せる状態を支援することが事業の軸として見えやすくなります。
具体例でわかるポイント
- 商品中心から価値中心へ見直しやすい
- 事業の広がり方が見えやすい
- 新しい手段を考えやすい
ドメイン分析を使うメリット
ドメイン分析を使うメリットは、主に次の通りです。
- 事業の軸を明確にしやすい
- 戦略のぶれを減らしやすい
- 顧客価値起点で考えやすい
- 新規事業や既存事業の再定義に使いやすい
たとえば、製品や手段だけで自社を定義すると、環境変化に弱くなりやすいです。ですが、顧客と価値を軸に定義すると、手段の再設計がしやすくなります。
ドメイン分析を使うときの注意点
注意
ドメイン分析は便利ですが、きれいな言葉を作るだけで終わると弱くなります。
よくある失敗は、次のようなものです。
- 顧客が広すぎる
- 提供価値が抽象的すぎる
- 手段だけを言い換えて終わる
- 戦略や実行に結びつかない
特に初心者は、「良さそうな定義文」を作って満足しがちですが、そうではありません。大切なのは、その定義で本当に意思決定がしやすくなるかです。
STP分析との違い
ドメイン分析とよく比較されるのが、STP分析です。
- ドメイン分析 → 自社がどの領域で誰に何をどうやって提供するかを定義する型
- STP分析 → 市場を分け、狙う相手と立ち位置を整理する型
つまり、ドメイン分析は事業領域の定義に向いており、STP分析は市場の中での狙い方の整理に向いています。
どう使い分ければよいか
まずドメイン分析で事業の軸を整理し、そのうえでSTP分析で市場のどこを狙うかを考える流れはとても使いやすいです。
ドメイン分析で「何の事業か」を決め、STP分析で「どこを狙うか」を決める、と考えるとわかりやすいです。
ビジネスモデルキャンバスとの違い
ドメイン分析は、ビジネスモデルキャンバスとも役割が異なります。
- ドメイン分析 → 事業領域そのものを定義する型
- ビジネスモデルキャンバス → 事業全体の仕組みを整理する型
この違いを理解しておくと、実務で迷いにくくなります。
ドメイン分析は、どこで勝負するかを見るのに向いています。
一方、ビジネスモデルキャンバスは、どう成立させるかを見るのに向いています。
ドメイン分析はどんな場面で使うと効果的か
特にドメイン分析が効果を発揮しやすいのは、次のような場面です。
- 事業の方向性を見直したいとき
- 新規事業の領域を定義したいとき
- 商品中心の発想を見直したいとき
- 会社や部門の存在意義を整理したいとき
逆に、複数事業の資源配分を考えたいときにはPPMやBCGマトリクスのほうが合います。
そのため、ドメイン分析は万能ではなく、自社がどこで価値を出すのかを定義したい場面で使うのが最も効果的です。
まとめ
ドメイン分析とは、誰に、何を、どうやって提供するのかという観点から、事業の領域や勝負どころを整理するフレームワークです。
経営企画、事業企画、新規事業、教育サービスの再定義、研究開発テーマの用途整理など幅広い場面で使いやすく、特に「自社は何の会社なのか」を整理したいときの入口として役立ちます。
最初は難しく見えるかもしれませんが、まずは
- 誰に
- 何を
- どうやって
の3つに分けて考えるだけでも十分です。
大切なのは、きれいな言葉を作ることではなく、事業の軸を明確にして意思決定しやすくすることです。
まずは身近なテーマで1回試してみてください。教育サービス、研究テーマ、社内部門の役割整理、新規事業の構想など、小さなテーマでも十分です。
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ドメイン分析だけでなく、その前後で使う型も一緒に知っておくと、実務でさらに使いやすくなります。