人材育成や管理職育成を考えるとき、「若手には何を伸ばしてもらうべきか」「管理職にはどのような能力が必要か」「階層ごとに求めるスキルをどう整理すればよいか」と迷うことはないでしょうか。
社員に求められる能力は、役職や立場によって変わります。
現場担当者には実務スキルが重要です。
一方で、管理職や経営層になるほど、人を動かす力や物事を大きく捉える力が求められます。
そんなときに役立つのが、カッツモデルです。
カッツモデルは、仕事に必要な能力を、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つで整理するフレームワークです。
人材育成、管理職研修、階層別研修、評価制度、キャリア開発などで活用できます。
この記事では、カッツモデルの意味、使い方、具体例、注意点までを、初心者向けにやさしく整理して解説します。
この記事でわかること
- カッツモデルとは何か
- カッツモデルは何に使うのか
- 3つのスキルの意味
- カッツモデルの使い方
- カッツモデルの具体例
- 関連フレームワークとの違い
最初から難しく考える必要はありません。まずは「カッツモデルは、仕事に必要な能力を3つに分けて整理するための型だ」とつかめれば十分です。
カッツモデルとは?
カッツモデルとは、仕事に必要な能力を3つのスキルに分けて整理するフレームワークです。
カッツモデルでは、主に次の3つのスキルを扱います。
- テクニカルスキル
- ヒューマンスキル
- コンセプチュアルスキル
やさしく言うと、カッツモデルは「実務をこなす力、人と関わる力、物事を大きく考える力」を整理する方法です。
テクニカルスキルは、業務を遂行するための専門知識や技術です。
ヒューマンスキルは、人と協力し、調整し、関係を築く力です。
コンセプチュアルスキルは、物事の本質や全体像を捉え、複雑な問題を考える力です。
カッツモデルの特徴は、役職や階層によって必要なスキルの比重が変わると考える点です。
一般社員や若手では、テクニカルスキルの比重が高くなります。
中間管理職では、テクニカルスキルに加えてヒューマンスキルが重要になります。
経営層や上位管理職では、コンセプチュアルスキルの重要性が高まります。
一言でいうと、カッツモデルは、階層ごとに必要な能力を整理するための人材育成フレームワークです。
カッツモデルは何に使うのか
カッツモデルは、人材育成や管理職育成で使います。
特に、階層ごとに必要な能力を整理したいときに役立ちます。
カッツモデルは、次のような場面で活用できます。
- 階層別研修を設計したいとき
- 若手、中堅、管理職に求める能力を整理したいとき
- 管理職育成のテーマを考えたいとき
- 評価項目や能力要件を整理したいとき
- キャリア開発の方向性を考えたいとき
- 部下育成で伸ばすべき能力を整理したいとき
- 昇格要件を考えるとき
たとえば、若手社員研修では、業務に必要な知識やスキルを身につけることが重要です。
一方で、管理職研修では、部下とのコミュニケーション、チーム運営、課題設定、意思決定などが重要になります。
さらに、経営層に近づくほど、事業全体や組織全体を見て判断する力が求められます。
カッツモデルを使うと、階層ごとにどの能力を重点的に育成すべきかを整理しやすくなります。
どんな人に向いているか
カッツモデルが向いているのは、次のような人です。
- 人材育成を担当している人
- 階層別研修を設計する人
- 管理職育成に関わる人
- 部下の能力開発を考える管理職
- 評価制度や昇格要件を考える人
- 自分のキャリアに必要なスキルを整理したい人
- 組織に必要な人材像を考えたい人
カッツモデルは、人事部門だけでなく、部門長や現場管理職にも使いやすいフレームワークです。
カッツモデルの基本的な考え方
カッツモデルの基本的な考え方は、仕事に必要な能力を3つに分け、役職に応じて重要度を変えて考えることです。
まず、テクニカルスキルは、実務を遂行するための専門能力です。
たとえば、営業であれば商談スキル、製造であれば工程知識、研究開発であれば技術知識、経理であれば会計知識などです。
若手や担当者層では、まずこのテクニカルスキルが重要になります。
次に、ヒューマンスキルは、人と関わる力です。
たとえば、コミュニケーション、チームワーク、調整、交渉、育成、傾聴、ファシリテーションなどです。
中堅社員や管理職では、周囲を巻き込みながら仕事を進めるため、ヒューマンスキルの重要性が高まります。
最後に、コンセプチュアルスキルは、概念化能力とも呼ばれます。
物事の全体像を捉える力、本質を見抜く力、複雑な問題を整理する力、戦略的に考える力などです。
管理職や経営層では、目の前の作業だけでなく、組織全体や事業全体を見て判断する必要があるため、コンセプチュアルスキルが重要になります。
カッツモデルでは、すべての人に3つのスキルが必要だと考えます。
ただし、役職や立場によって、どのスキルをより重視するかが変わります。
カッツモデルの使い方
カッツモデルは、次の流れで使うとわかりやすいです。
手順1 対象となる階層や人材を決める
まず、誰の能力を整理するのかを決めます。
対象は、若手社員、中堅社員、管理職、部長層、経営候補人材などです。
たとえば、階層別研修を作る場合は、次のように対象を分けます。
- 新入社員
- 若手社員
- 中堅社員
- 新任管理職
- 管理職
- 部長層
- 経営人材
対象を明確にすることで、どのスキルを重点的に育成するかを考えやすくなります。
手順2 テクニカルスキルを整理する
次に、その階層や職種に必要なテクニカルスキルを整理します。
テクニカルスキルは、実務を行うための専門知識や技術です。
たとえば、職種によって次のようなスキルがあります。
- 営業:商談、提案、顧客理解、見積作成
- 研究開発:実験設計、技術知識、データ解析、特許理解
- 製造:工程管理、設備操作、品質管理、安全管理
- 人事:採用、評価制度、労務管理、人材育成
- マーケティング:市場分析、顧客理解、施策設計、広告運用
若手や担当者層では、このテクニカルスキルをしっかり身につけることが重要です。
手順3 ヒューマンスキルを整理する
次に、ヒューマンスキルを整理します。
ヒューマンスキルは、人と関わりながら成果を出すための能力です。
たとえば、次のようなものがあります。
- 傾聴力
- 説明力
- 調整力
- 交渉力
- ファシリテーション
- 部下育成
- チームビルディング
- フィードバック
- 関係構築
中堅社員や管理職では、周囲を巻き込む力が重要になります。
自分だけで成果を出す段階から、チームや関係者を通じて成果を出す段階に変わるためです。
手順4 コンセプチュアルスキルを整理する
次に、コンセプチュアルスキルを整理します。
コンセプチュアルスキルは、物事を大きく捉え、本質を見抜く力です。
たとえば、次のようなものがあります。
- 課題設定力
- 構造化思考
- 戦略思考
- 仮説思考
- 全体最適で考える力
- 変化を読み取る力
- 抽象化する力
- 意思決定力
管理職や経営層では、目の前の作業だけでなく、事業や組織全体を見て判断する必要があります。
そのため、コンセプチュアルスキルが重要になります。
手順5 階層ごとの育成テーマに落とし込む
最後に、3つのスキルを階層ごとの育成テーマに落とし込みます。
たとえば、若手社員には、業務基礎、専門知識、報連相、仕事の進め方などを育成テーマにします。
中堅社員には、後輩指導、関係者調整、問題解決、業務改善などを育成テーマにします。
管理職には、部下育成、チームマネジメント、評価、目標設定、課題設定、組織運営などを育成テーマにします。
部長層や経営候補には、戦略立案、組織変革、事業視点、意思決定、全体最適などを育成テーマにします。
カッツモデルを使うと、階層別研修の設計や能力要件の整理がしやすくなります。
カッツモデルの具体例
ここでは、「研究開発部門の人材育成」を例に、カッツモデルの使い方を見てみます。
例 研究開発部門の人材育成で使う場合
前提として、化学メーカーの研究開発部門で、若手から管理職までの育成テーマを整理したいとします。
若手研究者にとって重要なのは、まずテクニカルスキルです。
たとえば、実験技術、分析技術、化学知識、安全管理、実験記録、特許や論文の基礎理解などです。
中堅研究者になると、テクニカルスキルに加えて、ヒューマンスキルが重要になります。
共同研究先との調整、製造部門や営業部門との連携、後輩指導、会議での説明、テーマ推進などが求められます。
管理職になると、さらにコンセプチュアルスキルが重要になります。
研究テーマの優先順位づけ、技術戦略、事業性判断、組織全体のリソース配分、将来の技術領域の見極めなどが必要になります。
このように整理すると、同じ研究開発人材でも、階層によって育成すべき能力が変わることがわかります。
別の例 営業部門の人材育成で使う場合
営業部門でも、カッツモデルは使えます。
若手営業には、商品知識、顧客訪問、提案書作成、見積作成、商談の基本などのテクニカルスキルが重要です。
中堅営業には、顧客との関係構築、社内調整、交渉、後輩指導、案件推進などのヒューマンスキルが重要になります。
営業管理職には、営業戦略、組織目標の設計、重点顧客の選定、チームマネジメント、市場変化の読み取りなどのコンセプチュアルスキルが重要になります。
このように、カッツモデルを使うと、職種ごとに階層別の育成テーマを整理できます。
具体例でわかるポイント
カッツモデルの具体例からわかるポイントは、階層によって必要な能力の比重が変わることです。
- 若手はテクニカルスキルを重視する
- 中堅はヒューマンスキルを伸ばす
- 管理職はコンセプチュアルスキルを高める
- すべての階層に3つのスキルは必要
- 役割の変化に合わせて育成テーマを変える
カッツモデルは、階層別研修や管理職育成を設計するときに使いやすいフレームワークです。
カッツモデルを使うメリット
カッツモデルを使うメリットは、階層ごとに必要なスキルを整理しやすくなることです。
人材育成では、「何を育てるべきか」があいまいになりがちです。
カッツモデルを使うと、実務能力、人間関係能力、概念化能力の3つに分けて考えられます。
主なメリットは、次の通りです。
- 階層別研修を設計しやすい
- 管理職に必要な能力を整理しやすい
- 若手、中堅、管理職の育成テーマを分けやすい
- 評価項目や昇格要件を考えやすい
- 個人の強みや課題を整理しやすい
- キャリア開発の方向性を考えやすい
- 組織に必要な人材像を説明しやすい
カッツモデルは、能力開発をシンプルに整理できるため、人事施策や研修設計の土台として使いやすいフレームワークです。
カッツモデルを使うときの注意点
カッツモデルを使うときに注意したいのは、階層ごとに必要なスキルを固定的に考えすぎないことです。
よくある失敗は、次のようなものです。
- 若手にはテクニカルスキルだけでよいと考える
- 管理職には専門知識が不要だと考える
- ヒューマンスキルを抽象的に扱いすぎる
- コンセプチュアルスキルを一部の上位層だけのものにする
- 職種ごとの違いを考えない
- 実際の業務や評価とつなげない
カッツモデルでは、階層によって重要度が変わると考えますが、どの階層でも3つのスキルは必要です。
若手にもコミュニケーション力や考える力は必要です。
管理職にも、現場や専門領域への理解は必要です。
また、職種によって求められるスキルの内容は変わります。
たとえば、研究開発のテクニカルスキルと営業のテクニカルスキルは違います。
そのため、カッツモデルを使うときは、自社の職種や階層に合わせて具体化することが大切です。
関連フレームワークとの違い
カッツモデルと関連するフレームワークには、コンピテンシーモデル、9ボックス、Will / Can / Must、SL理論などがあります。
それぞれの違いを簡単に整理します。
- カッツモデル
仕事に必要な能力を、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つで整理するフレームワークです。階層別育成に向いています。 - コンピテンシーモデル
高成果者の行動特性を整理するフレームワークです。具体的な行動要件を定めるときに向いています。 - 9ボックス
成果とポテンシャルの2軸で人材を整理するフレームワークです。配置や育成対象の検討に使われます。 - Will / Can / Must
本人の希望、能力、組織期待を整理するフレームワークです。キャリア面談や育成テーマの設定に向いています。 - SL理論
部下の成熟度や状況に応じてリーダーシップスタイルを変える考え方です。管理職の育成やマネジメントに役立ちます。
カッツモデルは、能力を大きく3分類で整理するためのフレームワークです。
一方で、具体的な行動特性を整理するならコンピテンシーモデル、人材配置を見るなら9ボックス、個人の希望と役割をすり合わせるならWill / Can / Mustが使いやすいです。
カッツモデルはどんな場面で使うと効果的か
カッツモデルは、特に次のような場面で効果的です。
- 階層別研修を設計したいとき
- 管理職育成のテーマを整理したいとき
- 若手、中堅、管理職に求める能力を分けたいとき
- 評価制度や昇格要件を整理したいとき
- 部下の成長課題を考えたいとき
- 自分に必要なスキルを棚卸ししたいとき
- 組織に必要な人材像を考えたいとき
カッツモデルは、人材育成の全体設計に向いています。
一方で、個別の育成計画を作る場合は、Will / Can / Mustやコンピテンシーモデルと組み合わせると、より具体的に考えやすくなります。
まとめ
カッツモデルとは、仕事に必要な能力を、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つで整理するフレームワークです。
テクニカルスキルは、実務を行うための専門知識や技術です。
ヒューマンスキルは、人と協力し、調整し、関係を築く力です。
コンセプチュアルスキルは、物事の全体像や本質を捉え、複雑な問題を考える力です。
カッツモデルでは、階層によって必要なスキルの比重が変わると考えます。
若手や担当者層ではテクニカルスキルが重要です。
中堅や管理職ではヒューマンスキルが重要になります。
上位管理職や経営層ではコンセプチュアルスキルの重要性が高まります。
大切なのは、3つのスキルを自社の職種や階層に合わせて具体化することです。
まずは、自分の組織の若手、中堅、管理職に対して、「どのテクニカルスキルが必要か」「どのヒューマンスキルが必要か」「どのコンセプチュアルスキルが必要か」を書き出してみましょう。
それが、階層別育成や管理職育成を考える第一歩になります。
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