事業や企画の方向性を考えるときに、「外部環境を見ることが大切なのはわかるけれど、PESTだけでは少し足りない」と感じることはないでしょうか。
近年は、環境対応や法規制の影響が大きくなっており、政治・経済・社会・技術だけでは見落としが出る場面もあります。
そんなときに役立つのが、PESTEL分析です。
PESTEL分析は、政治、経済、社会、技術に加えて、環境と法律まで含めて外部環境を整理するフレームワークです。共有いただいた一覧でも、PESTEL分析は「PESTにEnvironment、Legalを加える」と整理されています。
そこでこの記事では、PESTEL分析の意味、使い方、具体例、注意点までを、初心者向けにやさしく整理して解説します。
この記事でわかること
- PESTEL分析とは何か
- PESTEL分析は何に使うのか
- PESTEL分析の基本構成
- PESTEL分析の進め方
- PESTEL分析の具体例
- PEST分析との違い
最初から完璧に使いこなす必要はありません。まずは「PESTに環境と法律を足した外部環境分析の型だ」とわかれば十分です。
PESTEL分析とは?
PESTEL分析とは、Politics、Economy、Society、Technology、Environment、Legal の6つの視点から、外部環境を整理するフレームワークです。
もっとやさしく言うと、PESTEL分析は
自社では直接コントロールできない外の変化を、より細かく整理するための型です。
PEST分析では、政治、経済、社会、技術の4つで外部環境を見ますが、近年は環境問題や法規制の影響が大きくなっています。特に製造業、化学、エネルギー、食品、医療、教育、ITの一部領域などでは、環境と法律を独立して見ることに意味があります。
PESTEL分析は、そうした時代背景に合わせて、より実務的に外部環境を整理しやすくしたフレームワークです。
PESTEL分析を一言でいうと
PESTEL分析を一言でいうと、外部環境を6つの視点で広く見るフレームワークです。
PESTEL分析は、外部環境の変化を“抜けなく”見るために、PESTより一歩細かくした型です。
PESTEL分析は何に使うのか
PESTEL分析は、主に次のような場面で使います。
- 中長期の事業環境分析
- 経営企画や事業計画の前提整理
- 新規事業の外部環境整理
- 規制や環境対応が重要な業界の分析
- リスクや機会の整理
- 企画書や提案書の説得力向上
たとえば、新しい製品やサービスを考えるときに、技術的には可能でも、法規制や環境対応の観点で難しいことがあります。逆に、法制度の変化や環境対応需要が大きな機会になることもあります。PESTEL分析を使うと、そうした視点を整理しやすくなります。
特に、経営企画、事業企画、研究開発、マーケティング、新規事業担当には使いやすいフレームワークです。もちろん、社内教育や制度設計のようなテーマにも応用できます。
どんな人に向いているか
PESTEL分析が向いているのは、次のような人です。
- 外部環境を広く見たい人
- 規制や環境の影響が大きいテーマを扱う人
- PEST分析だけでは少し足りないと感じる人
- 中長期の事業前提を整理したい人
PESTEL分析の基本構成
PESTEL分析は、次の6つの要素で成り立っています。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
- Environment(環境)
- Legal(法律)
それぞれの意味を簡単に見ていきます。
Politics(政治)
Politicsは、政治や政策の動きを見る視点です。
政府方針、補助金、国際関係、政策変更などがここに入ります。
Economy(経済)
Economyは、景気、物価、為替、金利、所得などの経済要因を見る視点です。
需要やコスト、投資判断に影響しやすい項目です。
Society(社会)
Societyは、人口動態、価値観、働き方、生活者意識の変化を見る視点です。
顧客ニーズや受容性の変化に関わりやすい領域です。
Technology(技術)
Technologyは、技術革新や普及状況を見る視点です。
AI、DX、新材料、製造技術、通信技術などが入ります。
Environment(環境)
Environmentは、環境負荷、脱炭素、資源制約、持続可能性などを見る視点です。
近年は、企業活動そのものに強い影響を与えるため、独立して見る意義が高くなっています。
Legal(法律)
Legalは、法律や規制、制度運用を見る視点です。
法改正、業界規制、コンプライアンス、知財、労務関連などがここに入ります。
PESTEL分析の使い方
ここからは、PESTEL分析の基本的な使い方を順番に見ていきます。
最初は難しく考えず、テーマに関係する外部環境を6つの箱に分けて書き出すところから始めれば大丈夫です。
手順1 テーマを決める
まずは、何についてPESTEL分析をするのかを決めます。
事業全体なのか、新製品なのか、研究テーマなのか、社内施策なのかを明確にします。
手順2 6つの視点で情報を書き出す
Politics、Economy、Society、Technology、Environment、Legalの順で、テーマに関係しそうな変化を書き出します。
手順3 影響が大きいものを絞る
すべてを同じ重さで扱うのではなく、自社や企画に影響が大きそうな要因に絞ります。
手順4 機会とリスクを整理する
書き出した外部要因の中から、追い風になるものと逆風になるものを整理します。
手順5 次の打ち手につなげる
最後に、「だから何を考えるべきか」に落とし込みます。
単なる情報整理で終わらせず、戦略や企画の前提に変えることが大切です。
- テーマを決める
- 6つの視点で情報を書き出す
- 影響が大きいものを絞る
- 機会とリスクを整理する
- 次の打ち手につなげる
PESTEL分析は、情報を集めることよりも、重要な外部要因を見極めることが大切です。
PESTEL分析の具体例
ここでは、「環境対応型の新素材テーマを検討する」というテーマで、PESTEL分析の使い方を簡単に見てみます。
例:環境対応型の新素材テーマ検討
前提として、企業内で新しい環境配慮型素材の研究テーマを検討しているとします。
- Politics(政治)
脱炭素政策、産業支援策、補助金制度 - Economy(経済)
原材料価格の上昇、景気変動、コスト競争圧力 - Society(社会)
環境配慮製品への期待、サステナビリティ重視の高まり - Technology(技術)
新素材開発技術、リサイクル技術、製造プロセス高度化 - Environment(環境)
CO2排出削減要求、廃棄物削減、資源循環ニーズ - Legal(法律)
化学物質規制、廃棄規制、表示義務、各国法規対応
このように整理すると、
「技術的な可能性」だけでなく、
「環境ニーズは追い風か」
「法規制対応は重いか」
「経済面で採算が取れそうか」
まで見やすくなります。
具体例でわかるポイント
- 外部環境をより広く見られる
- 環境と法律を独立して考えやすい
- 研究開発や新規事業との相性がよい
PESTEL分析を使うメリット
PESTEL分析を使うメリットは、主に次の通りです。
- 外部環境を広く整理しやすい
- PESTより見落としを減らしやすい
- 環境と法律の影響を独立して見やすい
- 中長期のリスクと機会を整理しやすい
たとえば、PEST分析だけだと、環境対応や法規制の論点が政治や社会の中に埋もれてしまうことがあります。ですが、PESTEL分析を使うと、それらを独立して整理しやすくなります。
また、製造業や研究開発のように、規制や環境条件が事業成否に効く領域では、実務に直結しやすいのも大きな利点です。
PESTEL分析を使うときの注意点
注意
PESTEL分析は便利ですが、情報を広げすぎると、逆に何が重要かわからなくなることがあります。
PESTEL分析でよくある失敗は、次のようなものです。
- 関係の薄い情報まで集めすぎる
- PoliticsとLegal、SocietyとEnvironmentの境目があいまいになる
- ただのニュース一覧になる
- 自社や企画への影響に落とし込めない
特に初心者は、「たくさん書くほどよい」と思いがちですが、そうではありません。大切なのは、重要な外部要因を絞り込んで、自社への意味を考えることです。
PEST分析との違い
PESTEL分析とよく比較されるのが、PEST分析です。
- PEST分析 → 政治、経済、社会、技術の4視点で外部環境を見る
- PESTEL分析 → それに環境と法律を加えて、より広く外部環境を見る
つまり、PEST分析は基本形に向いており、PESTEL分析はより詳細に外部環境を見るのに向いています。
どう使い分ければよいか
まずはPEST分析でざっくり外部環境を見て、環境対応や法規制が重要なテーマならPESTEL分析へ広げる流れが使いやすいです。
特に、製造業、化学、医療、エネルギー、教育制度設計などでは、PESTELのほうが実務に合いやすいことがあります。
ファイブフォース分析との違い
PESTEL分析は、ファイブフォース分析とも役割が異なります。
- PESTEL分析 → マクロな外部環境を見る型
- ファイブフォース分析 → 業界構造や競争圧力を見る型
この違いを理解しておくと、実務で迷いにくくなります。
PESTEL分析は、外の大きな流れを見るのに向いています。
一方、ファイブフォース分析は、その業界の競争の厳しさを見るのに向いています。
PESTEL分析はどんな場面で使うと効果的か
特にPESTEL分析が効果を発揮しやすいのは、次のような場面です。
- 規制や環境対応が重要な業界の分析
- 研究開発テーマの外部環境整理
- 新規事業の前提条件整理
- 中長期の戦略や事業計画の見直し
逆に、顧客や競合の具体的な動きを整理したい場面では、3C分析やSTP分析のほうが合います。
そのため、PESTEL分析は万能ではなく、外部環境を広く、やや詳しく見たい場面で使うのが最も効果的です。
まとめ
PESTEL分析とは、政治、経済、社会、技術、環境、法律の6つの視点から外部環境を整理するフレームワークです。
経営企画、事業企画、新規事業、研究開発、制度設計など幅広い場面で使いやすく、特に「PEST分析より一歩詳しく外部環境を見たい」ときの入口として役立ちます。
最初は難しく見えるかもしれませんが、まずは
- Politics
- Economy
- Society
- Technology
- Environment
- Legal
の6つに分けて考えるだけでも十分です。
大切なのは、情報を並べることではなく、その変化が自社や企画にどう影響するかを考えることです。
まずは身近なテーマで1回試してみてください。研究テーマ、新製品企画、教育制度、環境対応施策など、小さなテーマでも十分です。
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PESTEL分析だけでなく、その前後で使う型も一緒に知っておくと、実務でさらに使いやすくなります。
