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QFDとは?初心者向けに意味・使い方・具体例をやさしく解説

新製品開発や技術開発では、「顧客が求めていること」と「開発現場が実際に設計・評価すること」がずれてしまうことがあります。

たとえば、顧客は「使いやすい」「壊れにくい」「軽い」「環境にやさしい」といった言葉で要望を伝えます。一方、開発現場では、寸法、重量、強度、耐熱性、粘度、反応速度、コスト、寿命など、具体的な技術項目で設計しなければなりません。

このときに難しいのは、顧客の言葉をそのまま開発仕様にできないことです。「使いやすい」とは、何がどうなれば使いやすいのでしょうか。「高品質」とは、どの性能がどの水準を満たせば高品質なのでしょうか。

そこで役立つのが、QFDです。

QFDは、日本語では品質機能展開と呼ばれます。顧客の要求を整理し、それを製品やサービスに必要な技術特性へ展開していくためのフレームワークです。

研究開発、製品開発、品質設計、商品企画、技術営業など、顧客価値と技術をつなぐ場面で非常に役立ちます。

目次

この記事でわかること

・QFDとは何か
・QFDは何に使うのか
・QFDの基本的な考え方
・QFDの使い方
・QFDの具体例
・関連フレームワークとの違い

最初から完璧に使いこなす必要はありません。まずは「QFDは顧客の要求を技術項目に変換するための型だ」とつかめれば十分です。

QFDとは?

QFDとは、Quality Function Deploymentの略で、日本語では品質機能展開と呼ばれます。

顧客の要求や期待を出発点にして、それを製品やサービスの機能、品質特性、設計項目、工程管理項目などへ展開していく考え方です。

初心者向けに言い換えると、QFDは「お客様の声を、開発現場が扱える技術の言葉に翻訳する方法」です。

たとえば、顧客が「この部品をもっと軽くしたい」と言った場合、開発現場では、重量、密度、強度、肉厚、材料構成、加工方法、耐久性、コストなどに分解して考える必要があります。

また、顧客が「長く使っても劣化しにくい材料がほしい」と言った場合は、耐候性、耐熱性、耐薬品性、疲労強度、加速劣化試験、保証期間などの技術特性に落とし込む必要があります。

QFDでは、顧客要求と技術特性の関係を整理し、どの技術項目を重視すべきかを明確にします。

一言でいうと、QFDは顧客要求を技術特性に変換し、開発で重視すべき品質や機能を明確にするためのフレームワークです。

QFDは何に使うのか

QFDは、顧客の声を製品開発や技術開発に反映するために使います。

顧客の要望は、必ずしも技術的に明確な形で語られるわけではありません。「もっと使いやすく」「もっと安心できる」「今より省エネに」「もっと短時間で処理したい」など、抽象的な言葉で表現されることが多くあります。

QFDは、こうした抽象的な要求を整理し、開発や設計で扱える具体的な項目に変換するために使います。

主な用途は次の通りです。

・顧客要求を整理する
・顧客の声を技術特性に変換する
・製品開発で重視すべき項目を決める
・開発部門と営業部門の認識を合わせる
・品質設計の優先順位を決める
・競合製品との差別化ポイントを整理する
・開発仕様の根拠を明確にする
・商品企画と技術開発をつなぐ
・設計、製造、品質保証の連携を強める

QFDを使うことで、「なぜこの性能を重視するのか」「なぜこの評価項目が必要なのか」を顧客要求にひもづけて説明しやすくなります。

どんな人に向いているか

QFDは、顧客要求を製品や技術に反映したい人に向いています。

・新製品開発を担当する人
・研究開発テーマを顧客価値につなげたい人
・商品企画を担当する人
・技術営業やマーケティング担当者
・品質設計や品質保証に関わる人
・顧客要求を開発仕様に落とし込みたい人
・開発部門と営業部門の認識ズレに悩んでいる人
・競合製品との差別化ポイントを整理したい人
・顧客の声を技術課題に変換したい人

特に、顧客要求が抽象的で、開発現場に伝わりにくい場合に有効です。

「営業は顧客が困っていると言うが、技術的に何を改善すべきか分からない」「開発は高性能化しているが、顧客にとって本当に価値があるのか分からない」といった場面で役立ちます。

QFDの基本的な考え方

QFDの基本は、顧客要求と技術特性の関係を見える化することです。

顧客要求とは、顧客が求めている価値や困りごとです。たとえば、「軽い」「壊れにくい」「操作しやすい」「短時間で処理できる」「環境に配慮している」「コストを下げたい」などです。

技術特性とは、その要求を実現するために開発側が管理できる項目です。たとえば、重量、強度、耐熱性、寸法精度、処理速度、消費電力、原材料比率、成形条件、表面粗さ、耐久時間などです。

QFDでは、顧客要求と技術特性を対応づけます。

たとえば、顧客要求が「軽い」であれば、関連する技術特性は「重量」「密度」「部品点数」「肉厚」「材料強度」などになります。顧客要求が「壊れにくい」であれば、「耐衝撃性」「疲労強度」「接合強度」「耐熱性」「耐候性」などが関係します。

この関係を整理することで、開発で何を優先すべきかが見えます。

QFDでよく使われる代表的な道具が、品質表です。品質表は、顧客要求と技術特性の関係を整理する表です。見た目が家の形に似ていることから、品質の家と呼ばれることもあります。

ただし、初心者は最初から複雑な表を作る必要はありません。まずは、顧客要求を左側に並べ、技術特性を上側に並べ、それぞれの関係を強い・中くらい・弱いで整理するだけでも十分に効果があります。

QFDの使い方

手順1 顧客要求を集める

まず、顧客要求を集めます。

顧客要求は、営業担当者のヒアリング、顧客インタビュー、問い合わせ内容、クレーム、アンケート、商談メモ、使用現場の観察、競合製品のレビューなどから集めることができます。

この段階では、最初から技術的な言葉に変換しようとしすぎないことが大切です。まずは、顧客が実際に使っている言葉を大切にします。

たとえば、次のような表現です。

・もっと軽くしてほしい
・作業時間を短くしたい
・長く使っても性能が落ちないようにしたい
・メンテナンスの手間を減らしたい
・不良が出にくい材料にしたい
・環境負荷を下げたい
・現場で扱いやすくしてほしい

顧客の言葉には、開発のヒントが含まれています。最初から社内用語に置き換えすぎると、本来の顧客課題が見えなくなることがあります。

手順2 顧客要求を整理する

次に、集めた顧客要求を整理します。

顧客要求は、そのままだと重複していたり、抽象度が違っていたりします。そのため、似た要求をまとめ、意味を整理します。

たとえば、「軽い」「持ち運びやすい」「作業者の負担を減らしたい」は、同じ方向の要求として整理できるかもしれません。一方で、「軽い」と「強い」は両立が難しい場合もあるため、別の要求として扱う必要があります。

整理するときは、次のような観点が役立ちます。

・性能に関する要求
・使いやすさに関する要求
・安全性に関する要求
・信頼性、耐久性に関する要求
・コストに関する要求
・環境対応に関する要求
・納期、供給安定性に関する要求
・メンテナンス性に関する要求

要求を整理したら、それぞれの重要度も考えます。すべての要求を同じ重みで扱うと、開発の優先順位が分かりにくくなります。

手順3 技術特性を洗い出す

次に、顧客要求を実現するために関係する技術特性を洗い出します。

技術特性は、開発側が設計、測定、管理できる項目です。ここでは、研究開発、設計、製造、品質保証などの関係者が一緒に考えると効果的です。

たとえば、材料開発であれば、次のような技術特性が考えられます。

・引張強度
・曲げ強度
・耐衝撃性
・耐熱性
・耐候性
・粘度
・分子量
・粒径
・密度
・硬度
・加工温度
・成形収縮率
・コスト
・リサイクル率

ITシステムであれば、処理速度、画面遷移数、入力項目数、エラー率、稼働率、レスポンス時間、保守工数などが技術特性になります。

重要なのは、顧客の言葉を、測定・設計・改善できる項目に変換することです。

手順4 顧客要求と技術特性の関係を整理する

顧客要求と技術特性を洗い出したら、それぞれの関係を整理します。

たとえば、顧客要求「軽い」に対して、技術特性「重量」は強く関係します。「密度」や「肉厚」も関係します。一方、「色調」は関係が弱いかもしれません。

関係の強さは、最初はシンプルに次のように分類すれば十分です。

・強く関係する
・ある程度関係する
・少し関係する
・ほとんど関係しない

複雑な数値評価をいきなり導入するよりも、関係者で議論しながら「どの技術特性が顧客価値に効いているのか」を確認することが重要です。

ここで、顧客要求と技術特性がうまく結びつかない場合は、要求の理解が不足している可能性があります。その場合は、顧客ヒアリングを追加したり、使用現場を確認したりする必要があります。

手順5 優先順位を決める

最後に、重視すべき技術特性の優先順位を決めます。

顧客要求の重要度が高く、その要求に強く関係する技術特性は、開発で優先的に取り組むべき項目です。

たとえば、顧客が最も重視しているのが「作業時間の短縮」であり、それに強く関係する技術特性が「硬化時間」「処理速度」「段取り時間」だと分かれば、それらを重点的に改善します。

優先順位を決めることで、開発リソースを集中しやすくなります。

すべてを改善しようとすると、時間もコストもかかります。QFDは、「顧客価値に効く技術特性はどれか」を見極めるために使うと効果的です。

QFDの具体例

例 新しい接着剤を開発する場合

化学メーカーが、工業用の新しい接着剤を開発する場合を考えます。

顧客からは、次のような要求が出ているとします。

・短時間で接着したい
・作業者が扱いやすい
・接着後に強度が高い
・高温環境でも剥がれにくい
・保管中に劣化しにくい
・環境負荷を下げたい

これを技術特性に変換すると、次のようになります。

・硬化時間
・粘度
・可使時間
・せん断強度
・剥離強度
・耐熱性
・保存安定性
・VOC量
・原料組成
・塗布性

たとえば、「短時間で接着したい」という要求には、硬化時間が強く関係します。「作業者が扱いやすい」という要求には、粘度、可使時間、塗布性が関係します。「高温環境でも剥がれにくい」という要求には、耐熱性、せん断強度、剥離強度が関係します。

このように整理すると、単に「高性能な接着剤を作る」のではなく、「顧客が重視する使いやすさと接着性能を両立するために、どの技術特性を改善すべきか」が見えてきます。

別の例 社内業務システムを開発する場合

社内の申請業務を効率化するシステムを開発する場合を考えます。

利用者からは、次のような要求があるとします。

・入力が簡単である
・承認状況がすぐ分かる
・差し戻し理由が分かりやすい
・過去の申請を探しやすい
・スマートフォンでも確認できる
・処理時間を短くしたい

これをシステムの技術特性に変換すると、次のようになります。

・入力項目数
・画面遷移数
・検索機能
・通知機能
・承認フロー設計
・レスポンス時間
・スマートフォン対応
・エラーメッセージの分かりやすさ
・データベース設計
・権限管理

「入力が簡単である」という要求には、入力項目数や画面遷移数が関係します。「承認状況がすぐ分かる」という要求には、通知機能やステータス表示が関係します。「過去の申請を探しやすい」という要求には、検索機能やデータベース設計が関係します。

このように、QFDは製造業の製品開発だけでなく、社内システムや業務改善にも使えます。

具体例でわかるポイント

具体例からわかるポイントは次の通りです。

・顧客要求は抽象的な言葉で出てくることが多い
・開発では、要求を測定可能な技術特性に変換する必要がある
・要求と技術特性の関係を整理すると優先順位が見える
・営業、開発、品質、製造が同じ認識を持ちやすくなる
・顧客価値に直結する技術課題を発見できる
・製品だけでなく、業務システムやサービスにも使える

QFDを使うと、「顧客が求めていること」と「開発で改善すべきこと」をつなげやすくなります。

QFDを使うメリット

QFDを使うメリットは、顧客要求と技術開発をつなげられることです。

開発現場では、性能向上や技術的な面白さに意識が向きやすい一方で、顧客が本当に重視している価値とずれてしまうことがあります。QFDを使うことで、顧客の声を出発点にして、開発の優先順位を考えられます。

主なメリットは次の通りです。

・顧客要求を開発仕様に反映しやすくなる
・営業部門と開発部門の認識を合わせやすい
・開発で重視すべき技術項目が明確になる
・競合との差別化ポイントを整理できる
・品質設計の根拠を説明しやすくなる
・顧客価値に直結しない過剰品質を避けやすい
・開発テーマの優先順位を決めやすい
・製品企画から設計、製造、品質保証までつなげやすい

特に、顧客要求が多く、何を優先すべきか分からない場合に有効です。

QFDを使うときの注意点

QFDを使うときは、表を作ること自体が目的にならないよう注意が必要です。

よくある失敗例は次の通りです。

・顧客要求を十分に集めずに社内だけで作ってしまう
・顧客の言葉を早い段階で社内都合に置き換えてしまう
・技術特性が測定できない表現になっている
・項目が多すぎて重要な論点が見えなくなる
・関係性の評価が担当者の主観だけになる
・営業、開発、品質、製造が一緒に議論していない
・完成した品質表が使われずに保管されるだけになる
・顧客要求の重要度を確認していない

QFDは、正確な表を作ることよりも、顧客要求と技術特性の関係を関係者で議論することに価値があります。

最初から完璧な品質表を作ろうとすると、時間がかかりすぎます。初心者は、まず主要な顧客要求を5〜10個、技術特性を5〜10個程度に絞って整理すると始めやすいです。

関連フレームワークとの違い

QFDと関連するフレームワークには、品質表、FMEA、DOE、技術ロードマップ、ステージゲートなどがあります。

品質表は、QFDでよく使われる代表的な表です。QFDが顧客要求を品質や機能に展開する考え方全体を指すのに対し、品質表はその考え方を具体的に整理するための道具です。

FMEAは、故障や不具合のリスクを洗い出すフレームワークです。QFDが「顧客要求を満たすために何を重視するか」を考えるのに対し、FMEAは「どこで失敗が起こるか」「そのリスクをどう防ぐか」を考えます。

DOEは、実験計画法のことで、複数の要因が結果に与える影響を効率的に調べる方法です。QFDで重要な技術特性が分かった後、その特性を最適化するためにDOEを使うことがあります。

技術ロードマップは、技術、製品、市場を時間軸で整理するフレームワークです。QFDが特定の製品や開発テーマにおける顧客要求と技術特性の関係を整理するのに対し、技術ロードマップは中長期の技術開発の方向性を整理します。

ステージゲートは、開発テーマを段階的に評価して進めるかどうかを判断するフレームワークです。QFDは、ステージゲートの初期段階や製品設計段階で、顧客要求を開発仕様に落とし込むために使えます。

QFDはどんな場面で使うと効果的か

QFDは、顧客要求と技術開発をつなげたい場面で効果的です。

活用場面としては、次のようなものがあります。

・新製品開発の初期段階
・顧客ニーズを開発仕様に落とし込むとき
・営業部門と開発部門の認識を合わせたいとき
・品質設計の重点項目を決めるとき
・競合製品との差別化を考えるとき
・既存製品の改良テーマを決めるとき
・顧客クレームを技術課題に変換するとき
・商品企画と研究開発をつなぐとき
・開発テーマの優先順位を決めるとき

特に、「顧客の声はあるが、開発として何をすればよいか分からない」という状況で役立ちます。

まとめ

QFDは、顧客要求を技術特性に変換し、開発で重視すべき品質や機能を明確にするためのフレームワークです。

顧客は、自分の要望を必ずしも技術的な言葉で説明するわけではありません。「使いやすい」「軽い」「壊れにくい」「環境にやさしい」といった言葉を、開発現場が扱える項目に変換する必要があります。

QFDを使うことで、顧客要求と技術特性の関係が見えやすくなり、開発の優先順位を決めやすくなります。また、営業、開発、品質、製造などの関係者が同じ視点で議論しやすくなります。

まずは、自社の製品やサービスについて、顧客要求を5つ書き出し、それぞれに関係する技術特性を並べてみましょう。

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