BtoB営業をしていると、「商談は進んでいるように見えるのに、最後で失注する」「手応えはあるのに、結局決まらない」と感じることはないでしょうか。
案件が大きくなるほど、単に先方が興味を持っているだけでは不十分で、意思決定の構造や評価基準まで把握しないと受注しにくくなります。
そんなときに役立つのが、MEDDIC / MEDDPICCです。
MEDDIC / MEDDPICCは、BtoB営業で案件の質を見極め、受注可能性を整理するためのフレームワークです。
特に、法人向けSaaS、高額商材、複数部門が関与する提案営業などで使いやすい型です。
そこでこの記事では、MEDDIC / MEDDPICCの意味、使い方、具体例、注意点までを、初心者向けにやさしく整理して解説します。
この記事でわかること
- MEDDIC / MEDDPICCとは何か
- MEDDIC / MEDDPICCは何に使うのか
- 各要素の意味
- MEDDIC / MEDDPICCの使い方
- MEDDIC / MEDDPICCの具体例
- BANTとの違い
最初から完璧な案件管理をする必要はありません。まずは「受注しやすい案件かどうかを、項目ごとに確認する型だ」とわかれば十分です。
MEDDIC / MEDDPICCとは?
MEDDIC / MEDDPICCとは、BtoB営業で案件を精査するためのフレームワークです。
案件が本当に進んでいるのか、何が足りないのか、どこにリスクがあるのかを整理するのに向いています。
もっとやさしく言うと、MEDDIC / MEDDPICCは
この案件は本当に受注に近いのかを、重要項目に分けて確認する型です。
BtoB営業では、相手が「いいですね」と言っていても、実際には
- 予算がない
- 決裁者が見えていない
- 競合に負けそう
- 導入理由が弱い
- 社内調整が進んでいない
といったことがよくあります。
MEDDIC / MEDDPICCを使うと、その見落としを減らしやすくなります。
MEDDICとMEDDPICCの違い
MEDDICは、基本形として次の要素で構成されます。
- Metrics
- Economic Buyer
- Decision Criteria
- Decision Process
- Identify Pain
- Champion
MEDDPICCは、これにいくつかの視点を追加した発展形です。
一般的には、次のような形で使われます。
- Metrics
- Economic Buyer
- Decision Criteria
- Decision Process
- Paper Process
- Identify Pain
- Champion
- Competition
つまり、MEDDPICCは、契約手続きや競合状況まで含めて、より実務的に見る型です。
MEDDIC / MEDDPICCを一言でいうと
MEDDIC / MEDDPICCを一言でいうと、BtoB案件の受注確度を見極めるフレームワークです。
MEDDIC / MEDDPICCは、商談の雰囲気ではなく、受注に必要な条件がそろっているかを見るための型です。
MEDDIC / MEDDPICCは何に使うのか
MEDDIC / MEDDPICCは、主に次のような場面で使います。
- BtoB営業案件の精査
- 案件レビュー
- 受注確度の見極め
- 営業パイプライン管理
- 高額商材の提案営業
- 長期案件の進捗確認
たとえば、法人向けシステム提案では、現場担当者が好感触でも、決裁者が納得しなければ進みません。
また、評価基準や社内手続きが見えていないと、途中で止まることがあります。
MEDDIC / MEDDPICCは、そうしたBtoB営業特有の複雑さを整理するのに役立ちます。
どんな人に向いているか
MEDDIC / MEDDPICCが向いているのは、次のような人です。
- 法人営業担当者
- 営業マネージャー
- SaaS営業に関わる人
- 高額商材や複数部門提案を扱う人
MEDDIC / MEDDPICCの基本構成
ここでは、MEDDPICCまで含めて、それぞれの意味を簡単に見ていきます。
Metrics
Metricsは、導入によってどんな数値改善が起きるかです。
コスト削減、作業時間短縮、売上向上、歩留まり改善など、数字で語れる価値があるかを見ます。
Economic Buyer
Economic Buyerは、最終的なお金の判断をする人です。
実際の決裁権者、あるいは予算を握っている人が誰かを見ます。
Decision Criteria
Decision Criteriaは、相手が何を基準に選ぶかです。
価格、機能、導入実績、サポート、セキュリティ、運用負荷など、評価の物差しを把握します。
Decision Process
Decision Processは、どういう流れで意思決定されるかです。
誰が関与し、どの会議を通り、どのタイミングで決まるのかを見ます。
Paper Process
Paper Processは、契約や購買手続きの流れです。
法務、購買、契約書レビュー、発注処理など、決裁後に何があるかを見ます。
Identify Pain
Identify Painは、相手が抱えている本当の課題です。
なんとなく便利そう、ではなく、「今これに困っている」があるかを見ます。
Champion
Championは、自社提案を社内で前向きに推してくれる味方です。
単なる窓口担当ではなく、社内で後押ししてくれる人がいるかが重要です。
Competition
Competitionは、競合の存在です。
他社提案だけでなく、内製、現状維持、先送りも競合になり得ます。
MEDDIC / MEDDPICCの使い方
ここからは、MEDDIC / MEDDPICCの基本的な使い方を順番に見ていきます。
最初は難しく考えず、案件ごとに各項目を埋めてみるところから始めれば大丈夫です。
手順1 案件を1つ選ぶ
まずは、進行中の案件を1つ選びます。
大きめの商談や、失注リスクが気になる案件で使うと効果が見えやすいです。
手順2 各項目を埋める
Metrics、Economic Buyer、Decision Criteria、Decision Process、Paper Process、Identify Pain、Champion、Competitionの観点で情報を整理します。
手順3 空欄や弱い項目を見つける
埋まっていない項目や、曖昧な項目があれば、それがリスクの候補です。
手順4 次のアクションを決める
足りない情報を取りに行く、決裁者に近づく、競合との差を再整理するなど、次の行動を決めます。
手順5 定期的に更新する
案件は進むにつれて状況が変わるので、MEDDIC / MEDDPICCも更新していきます。
- 案件を1つ選ぶ
- 各項目を埋める
- 空欄や弱い項目を見つける
- 次のアクションを決める
- 定期的に更新する
MEDDIC / MEDDPICCは、表を埋めることではなく、受注リスクを早めに見つけることが大切です。
MEDDIC / MEDDPICCの具体例
ここでは、「法人向け勤怠管理システムの提案営業」を例に、考え方を簡単に見てみます。
例:勤怠管理システムの提案営業
前提として、ある企業に勤怠管理システムを提案しているとします。
- Metrics
月末締め作業を月20時間削減できる
集計ミスを減らせる - Economic Buyer
情報システム部長ではなく、最終決裁は管理本部長 - Decision Criteria
セキュリティ、既存システム連携、価格、導入実績が重視される - Decision Process
現場部門ヒアリング → 情シス確認 → 管理部門会議 → 決裁 - Paper Process
契約前に法務レビューと購買部確認が必要 - Identify Pain
手作業集計が多く、締め処理が遅い
法改正対応にも不安がある - Champion
人事部の担当課長が前向きで、社内で導入を推してくれている - Competition
他社SaaSが2社
さらに「Excel運用を続ける」という現状維持案も競合
このように整理すると、
「感触はよいが決裁者との接点が弱い」
「導入メリットはあるが競合比較が不十分」
など、次に詰めるべきポイントが見えやすくなります。
具体例でわかるポイント
- 案件の弱点が見えやすい
- 次に取るべき行動を決めやすい
- 商談の雰囲気ではなく条件で判断しやすい
MEDDIC / MEDDPICCを使うメリット
MEDDIC / MEDDPICCを使うメリットは、主に次の通りです。
- 案件の受注確度を見やすい
- 見落としを減らしやすい
- 営業レビューの質を上げやすい
- 次のアクションを明確にしやすい
たとえば、「感触は良いです」で終わる営業報告よりも、「決裁者は誰で、評価基準は何で、競合は何か」が整理されていたほうが、判断しやすくなります。
MEDDIC / MEDDPICCを使うときの注意点
注意
MEDDIC / MEDDPICCは便利ですが、情報を埋めること自体が目的になると弱くなります。
よくある失敗は、次のようなものです。
- 形式的に埋めるだけになる
- 推測で埋めてしまう
- Championと単なる窓口担当を混同する
- Competitionを他社だけだと思い込む
特に初心者は、「担当者が前向きだから大丈夫」と考えがちですが、そうではありません。大切なのは、本当に意思決定を前に進める条件がそろっているかを見ることです。
BANTとの違い
MEDDIC / MEDDPICCとよく比較されるのが、BANTです。
- MEDDIC / MEDDPICC → 案件の質や進行条件を多面的に見る型
- BANT → 予算、決裁権、必要性、時期を簡潔に確認する型
つまり、MEDDIC / MEDDPICCは複雑なBtoB案件の精査に向いており、BANTは初期ヒアリングや簡易見極めに向いています。
どう使い分ければよいか
初期接点でざっくり見込みを確認したいならBANTが使いやすいです。
一方で、案件が進んできて、受注確度をしっかり見たいならMEDDIC / MEDDPICCのほうが向いています。
セールスファネルとの違い
MEDDIC / MEDDPICCは、セールスファネルとも役割が異なります。
- MEDDIC / MEDDPICC → 個別案件の質を精査する型
- セールスファネル → 営業全体の流れと歩留まりを見る型
この違いを理解しておくと、実務で迷いにくくなります。
MEDDIC / MEDDPICCは、案件1件ごとの深さを見るのに向いています。
一方、セールスファネルは、営業全体の流れを見るのに向いています。
MEDDIC / MEDDPICCはどんな場面で使うと効果的か
特にMEDDIC / MEDDPICCが効果を発揮しやすいのは、次のような場面です。
- 高額なBtoB案件を扱うとき
- 決裁者が複数いる案件を進めるとき
- 競合との比較が厳しいとき
- 案件レビューの精度を上げたいとき
逆に、まだ初期接点の段階で簡易に見極めたいときにはBANT、営業全体の歩留まりを見たいときにはセールスファネルのほうが合います。
そのため、MEDDIC / MEDDPICCは万能ではなく、複雑なBtoB案件の受注可能性を精査したい場面で使うのが最も効果的です。
まとめ
MEDDIC / MEDDPICCとは、BtoB営業で案件の質や受注条件を整理し、受注確度を見極めるためのフレームワークです。
法人営業、SaaS営業、高額商材提案、長期商談型ビジネスなど幅広い場面で使いやすく、特に「案件は進んでいるのに決まらない」ときの入口として役立ちます。
最初は難しく見えるかもしれませんが、まずは
- 数字で語れる価値があるか
- 決裁者は見えているか
- 評価基準と意思決定プロセスは分かっているか
- 本当の課題は何か
- 味方はいるか
- 競合は何か
を確認するだけでも十分です。
大切なのは、感触で判断することではなく、受注に必要な条件がそろっているかを見ることです。