仕事をしていると、「相手に言いにくいことを伝えなければならない場面」があります。
たとえば、上司に業務量の相談をしたいとき、同僚に締切を守ってほしいと伝えたいとき、部下に改善してほしい行動を伝えるとき、取引先に条件変更をお願いするときなどです。
このような場面では、言い方を間違えると、相手を責めているように聞こえたり、自分の不満だけをぶつけているように見えたりします。一方で、遠慮しすぎると、本当に伝えるべきことが伝わりません。
そこで役立つのがDESC法です。
DESC法は、事実、気持ち、提案、選択肢の順番で伝えるコミュニケーションのフレームワークです。相手を責めずに、自分の考えや要望を伝えるために使います。
職場では、正論を言うだけではうまくいかないことが多くあります。相手との関係を保ちながら、必要なことをきちんと伝える力が求められます。DESC法は、そのための実践的な伝え方の型です。
この記事でわかること
・DESC法とは何か
・DESC法は何に使うのか
・DESC法の基本的な考え方
・DESC法の使い方
・DESC法の具体例
・関連フレームワークとの違い
最初から完璧に使いこなす必要はありません。まずは「DESC法は相手を責めずに要望を伝えるための型だ」とつかめれば十分です。
DESC法とは?
DESC法とは、相手に言いにくいことや要望を伝えるときに使うコミュニケーションのフレームワークです。
DESCは、次の4つの要素の頭文字を取ったものです。
・Describe:事実を描写する
・Express:自分の気持ちや考えを伝える
・Specify:具体的な提案や要望を伝える
・Choose:選択肢や結果を示す
DESC法の特徴は、いきなり「こうしてください」と言うのではなく、まず事実を整理して伝える点です。そのうえで、自分がどう感じているか、何を希望しているか、どのような選択肢があるかを順番に伝えます。
たとえば、同僚が提出期限を守らない場合、いきなり「ちゃんと期限を守ってください」と言うと、相手は責められたように感じるかもしれません。
DESC法を使うと、「前回と今回の資料提出が予定より2日遅れています。こちらの確認作業にも影響が出ていて少し困っています。次回からは、期限前日の午前中までに進捗を共有してもらえると助かります。難しい場合は、早めに相談してもらえれば調整できます」と伝えられます。
初心者向けに言い換えると、DESC法は「事実から入り、感情を押しつけず、具体的なお願いをする型」です。
一言でいうと、DESC法は相手との関係を保ちながら要望を伝えるためのフレームワークです。
DESC法は何に使うのか
DESC法は、相手に改善してほしいこと、お願いしたいこと、断りたいこと、相談したいことを伝える場面で使います。
特に、感情的になりやすい場面や、相手との関係を悪くしたくない場面で効果的です。仕事では、強く言いすぎても、遠慮しすぎても問題が起きます。DESC法を使うことで、事実に基づいて冷静に伝えやすくなります。
DESC法は、次のような用途で使えます。
・部下や後輩に改善点を伝える
・同僚に協力を依頼する
・上司に業務量や優先順位を相談する
・取引先に条件変更をお願いする
・会議で反対意見を伝える
・相手の行動による影響を伝える
・依頼を断る
・職場の人間関係のトラブルを予防する
DESC法は、単なる話し方のテクニックではありません。自分の意見も相手の立場も大切にしながら、建設的に話し合うための型です。
どんな人に向いているか
DESC法は、特に次のような人に向いています。
・言いにくいことを伝えるのが苦手な人
・つい我慢してしまい、不満をためやすい人
・相手に強く言いすぎてしまう人
・部下や後輩へのフィードバックに悩んでいる人
・上司への相談や依頼が苦手な人
・会議で反対意見をうまく伝えたい人
・取引先や関係部署と円滑に調整したい人
・職場のコミュニケーションを改善したい人
・アサーティブな伝え方を身につけたい人
DESC法は、相手に配慮しながらも、自分の意見をきちんと伝えたい人に向いています。特に、管理職、リーダー、人事担当者、教育担当者、営業担当者など、人との調整が多い仕事では役立つ場面が多いです。
DESC法の基本的な考え方
DESC法の基本は、「事実」と「感情」と「要望」を分けて伝えることです。
職場のコミュニケーションがこじれる原因の一つは、事実と解釈と感情が混ざってしまうことです。
たとえば、「あなたはいつも締切を守らない」と言うと、相手は責められたと感じやすくなります。「いつも」という表現は、事実というよりも話し手の印象です。相手は「いつもではない」と反論したくなるかもしれません。
DESC法では、まずDescribeで客観的な事実を伝えます。次にExpressで、自分の気持ちや考えを伝えます。そしてSpecifyで、具体的にどうしてほしいかを伝えます。最後にChooseで、選択肢や今後の影響を示します。
この順番にすることで、相手を責めるのではなく、問題を一緒に解決する姿勢を作りやすくなります。
DESC法では、次のような姿勢が大切です。
・相手の人格ではなく、行動や状況に焦点を当てる
・あいまいな不満ではなく、具体的な事実を伝える
・感情をぶつけるのではなく、自分の状態として伝える
・相手が行動できる具体的な提案をする
・一方的に命令せず、選択肢や相談の余地を残す
DESC法は、対立を避けるための型ではありません。必要なことを建設的に伝え、よりよい関係と成果につなげるための型です。
DESC法の使い方
手順1 事実を客観的に伝える
最初に、Describeとして事実を伝えます。
ここで重要なのは、評価や感情を入れすぎないことです。相手の人格を責めるのではなく、実際に起きている行動や状況を具体的に伝えます。
たとえば、次のような表現です。
・今週の定例会議に、資料が開始10分前に共有されました
・前回と今回の2回、提出期限を過ぎてから資料が届きました
・この1週間で、同じ確認依頼が3回発生しています
・現在、私の担当案件が5件重なっています
・会議中に、まだ発言していないメンバーが複数います
「いつも遅い」「全然協力してくれない」「雑です」といった表現は、相手に反発されやすくなります。できるだけ、日時、回数、状況などを入れて事実として伝えることが大切です。
手順2 自分の気持ちや影響を伝える
次に、Expressとして自分の気持ちや考えを伝えます。
ここでは、相手を責めるのではなく、「私はこう感じています」「業務上このような影響が出ています」という形で伝えます。
たとえば、次のような表現です。
・確認時間が十分に取れず、不安を感じています
・後工程に影響が出るため、少し困っています
・優先順位が判断しづらく、作業が進めにくい状態です
・全員の意見を聞けていない点が気になっています
・このままだと、納期に間に合うか心配です
感情を伝えることは悪いことではありません。ただし、「あなたのせいで困っている」と責めるのではなく、「私は困っている」「業務に影響が出ている」と伝えることが重要です。
手順3 具体的な要望を伝える
次に、Specifyとして具体的な要望や提案を伝えます。
ここでは、相手が実際に行動できるレベルまで具体化します。「ちゃんとしてほしい」「もっと早くしてほしい」ではなく、「いつまでに」「何を」「どのように」してほしいかを伝えます。
たとえば、次のような表現です。
・次回からは、会議前日の17時までに資料を共有してもらえますか
・締切に間に合わない場合は、前日午前中までに相談してもらえると助かります
・今週中に、優先順位を一緒に確認させてください
・次回の会議では、最初に全員から一言ずつ意見を聞く進め方にしたいです
・この条件で進められるか、明日中に確認いただけますか
要望が具体的であるほど、相手は対応しやすくなります。逆に、要望があいまいだと、相手は何を変えればよいのかわかりません。
手順4 選択肢や結果を示す
最後に、Chooseとして選択肢や結果を示します。
これは、相手に圧力をかけるためではなく、次にどう進めるかを明確にするためです。相手にとっても選択肢が見えると、対応しやすくなります。
たとえば、次のような表現です。
・難しい場合は、担当範囲を見直す方法も考えられます
・事前共有が難しければ、会議時間を短くして確認会を別に設ける方法もあります
・今週中に対応できる場合はこのまま進め、難しい場合は納期を再調整しましょう
・A案が難しければ、B案で進めることも可能です
・このまま遅れが続く場合は、上長も含めて進め方を相談したいです
Chooseでは、相手に逃げ道を与えるというより、現実的な選択肢を示します。一方的に押しつけるのではなく、話し合いの余地を残すことが大切です。
手順5 口調をやわらかく調整する
DESC法は、型どおりに言えばよいというものではありません。
特に日本の職場では、相手との関係性や立場によって、口調の調整が必要です。上司、同僚、部下、取引先では、同じ内容でも言い方を変える必要があります。
たとえば、上司に対しては「ご相談させてください」「優先順位を確認させていただきたいです」といった表現が使いやすいです。同僚には「次回からこうしてもらえると助かります」と伝えられます。部下には「次回からはこの進め方でお願いします」と明確に伝えることも必要です。
DESC法の目的は、相手を型にはめることではなく、伝えるべきことを冷静に整理することです。
DESC法の具体例
例 同僚に資料提出の遅れを改善してほしい場合
同僚が会議資料の提出期限を守らない場合、DESC法を使うと次のように伝えられます。
Describe:
前回と今回の会議で、資料が提出期限を過ぎてから共有されました。
Express:
会議前に内容を確認する時間が取れず、当日の議論が少し進めにくくなっています。
Specify:
次回からは、会議前日の17時までに資料を共有してもらえると助かります。
Choose:
もし前日までの共有が難しい場合は、途中段階でもよいので、進捗を先に共有してもらえれば調整できます。
この伝え方では、相手を「だらしない」「いつも遅い」と責めていません。事実、影響、要望、代替案を順番に伝えているため、相手も受け止めやすくなります。
別の例 上司に業務量を相談する場合
業務量が多く、納期に支障が出そうな場合にも、DESC法は使えます。
Describe:
現在、今週中に対応が必要な案件が5件あり、そのうち3件は資料作成を伴う内容です。
Express:
このまま進めると、各案件の品質を十分に確保するのが難しいと感じています。
Specify:
優先順位を確認し、今週必ず完了すべき案件と、来週に回せる案件を整理させてください。
Choose:
もし全件を今週中に進める必要がある場合は、作業範囲を絞るか、他のメンバーに一部協力を依頼する形にしたいです。
この例では、「忙しすぎます」と感情だけを伝えるのではなく、現在の状況と業務への影響を整理して伝えています。そのため、上司も判断しやすくなります。
具体例でわかるポイント
DESC法の具体例から、次のようなポイントがわかります。
・相手の人格ではなく、具体的な事実を伝える
・不満ではなく、業務上の影響として説明する
・要望は具体的な行動に落とし込む
・相手が対応しやすい選択肢を示す
・強く言いすぎず、遠慮しすぎない伝え方ができる
DESC法は、相手との関係を壊さずに、必要なことを伝えるための実務的なコミュニケーション技術です。
DESC法を使うメリット
DESC法を使うメリットは、言いにくいことを冷静に伝えやすくなることです。
職場では、問題に気づいていても「波風を立てたくない」と考えて言わないままにしてしまうことがあります。しかし、必要なことを伝えないと、問題が大きくなる場合があります。
DESC法を使えば、感情的にならず、相手を責めず、具体的な改善につなげやすくなります。
DESC法の主なメリットは、次のとおりです。
・言いにくいことを整理して伝えられる
・相手を責める表現を減らせる
・感情的な対立を防ぎやすい
・具体的な改善行動につながりやすい
・上司や同僚への相談がしやすくなる
・部下や後輩へのフィードバックに使える
・依頼や断りを伝えやすくなる
・職場の心理的安全性を高めやすい
DESC法は、自分の主張を押し通すためのものではありません。相手も自分も尊重しながら、問題解決に向かうための方法です。
DESC法を使うときの注意点
DESC法を使うときは、形式だけをなぞらないことが大切です。
たとえば、事実を伝えているつもりでも、実際には相手を責める表現になっていることがあります。「あなたはいつも対応が遅いです」は、事実のように見えて、かなり強い評価が入っています。
よくある失敗例は、次のとおりです。
・Describeで感情や評価を混ぜてしまう
・Expressで不満をぶつけるだけになる
・Specifyがあいまいで、相手が何をすればよいかわからない
・Chooseが脅しのように聞こえる
・相手の事情をまったく聞かない
・自分の要望だけを一方的に押しつける
・口調が硬すぎて不自然になる
特に注意したいのは、Chooseの使い方です。「改善しないなら上司に言います」のように伝えると、脅しに聞こえることがあります。必要な場合でも、「このまま続く場合は、進め方を上長も含めて相談したいです」のように、業務上の調整として伝える方が建設的です。
DESC法は、相手をコントロールするための技術ではありません。対話を始めるための整理方法として使うことが大切です。
関連フレームワークとの違い
PREP法との違い
PREP法は、結論、理由、具体例、再結論の順番で主張をわかりやすく伝えるフレームワークです。
DESC法は、相手に要望や改善依頼を伝えるためのフレームワークです。
PREP法は「自分の考えを論理的に伝える」場面に向いています。DESC法は「相手との関係に配慮しながら、言いにくいことを伝える」場面に向いています。
SBIとの違い
SBIは、Situation、Behavior、Impactの順でフィードバックを伝えるフレームワークです。
SBIは、特定の状況における行動と影響を伝えることに重点があります。DESC法は、それに加えて自分の気持ちや具体的な要望、選択肢まで伝える点が特徴です。
部下へのフィードバックではSBI、改善依頼や相談まで含めたい場合はDESC法が使いやすいです。
STARとの違い
STARは、Situation、Task、Action、Resultの順で経験や実績を説明するフレームワークです。
STARは、自己PRや面接、評価面談などで「自分が何をしたか」を説明するための型です。一方、DESC法は、相手に何かを伝えたり依頼したりするための型です。
STARが経験整理に向いているのに対し、DESC法は対人コミュニケーションに向いています。
SDS法との違い
SDS法は、概要、詳細、まとめの順で説明するフレームワークです。
SDS法は、情報をわかりやすく説明する場面に向いています。DESC法は、相手に具体的な要望や改善を伝える場面に向いています。
説明資料や研修ではSDS法、職場の相談や依頼ではDESC法が効果的です。
議事録フレームとの違い
議事録フレームは、会議の目的、論点、決定事項、宿題、期限を整理するための型です。
DESC法は、会議中の対話や意見調整で使いやすい型です。たとえば、会議で反対意見を伝えるときにDESC法を使い、その結果を議事録フレームで整理すると、実務上の流れがきれいになります。
DESC法はどんな場面で使うと効果的か
DESC法は、相手に配慮しながらも、必要なことをきちんと伝えたい場面で効果的です。
具体的には、次のような場面で使えます。
・部下や後輩に改善点を伝えるとき
・同僚に協力を依頼するとき
・上司に業務量や納期を相談するとき
・取引先に条件変更をお願いするとき
・会議で反対意見を伝えるとき
・相手の発言や行動による影響を伝えるとき
・依頼を断るとき
・職場の人間関係を悪化させずに調整したいとき
DESC法は、言いにくいことを言うための型ですが、決して冷たい話し方ではありません。むしろ、相手を一方的に責めず、対話の余地を残すための方法です。
まとめ
DESC法は、Describe、Express、Specify、Chooseの順番で、相手に要望や改善点を伝えるフレームワークです。
仕事では、言いにくいことを避け続けると、問題が大きくなることがあります。一方で、感情的に伝えると、相手との関係が悪くなることもあります。DESC法を使えば、事実、気持ち、要望、選択肢を整理して、冷静かつ建設的に伝えやすくなります。
特に、上司への相談、同僚への依頼、部下へのフィードバック、取引先との調整など、職場のさまざまな場面で役立ちます。
まずは、言いにくいことを伝える前に「事実は何か」「自分は何に困っているのか」「相手に具体的に何をお願いしたいのか」を書き出してみましょう。
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